福岡地区水道企業団と福岡市、協和機電工業(長崎市)は5日、福岡市の海の中道奈多海水淡水化センター(まみずピア)で、浸透圧を利用して発電する国内初の「浸透圧発電施設」の運転を始めた。年間発電量は、福岡市の一般家庭約290世帯の年間使用量に相当する88万kW時。今後5年かけて機器の劣化や性能、ランニングコストなどを検証する。
同日に開かれた式典で、高島宗一郎福岡市長は「1日最大5万tの真水を海水からつくる日本最大の海水淡水化施設である、まみずピアの20年周年の節目に新しいチャレンジができてうれしい。これをきっかけに脱炭素社会の実現に貢献できるものを福岡で開発したい」とあいさつした。
浸透圧発電は、海水を淡水化する際に放流される濃縮海水と和白水処理センターから放流される下水処理水(淡水)の塩分濃度差によって生じる浸透圧を利用する。二つの放流水を隔てる浸透膜が水だけを通すため、濃縮海水に下水処理水が移動する力で水車を回し発電する。
天候に左右されずに発電できるのが特徴で、稼働率は約90%となる見通しだ。1日当たりの濃縮海水使用量は1万m3、下水処理水使用量は9200m3。発電に使う電力を除いた正味発電電力は110kWとなる。発電システムの設置と運転は協和機電工業が担当している。
同センターの廣川憲二所長は「将来的に普通の海水を使った実用化を目指している。脱炭素社会の実現に向けてこの技術が世界中に広がると期待している」と語った。