◇地方整備局と実践に即した連携を確認
A 9月1日の「防災の日」にあわせて、建設業界でも企業や行政機関、業界団体の防災演習が実施された。
B 建設コンサルタンツ協会の災害対応演習を取材したけど、今回は地方整備局の統括防災官が参加していた。五つのフェーズに分けた演習の中では、被災状況が徐々に明らかになってきたとの想定で、統括防災官が被災施設の復旧設計を要請するなど、本番さながらに連携方法を確認していた。
C 建コン協と地方整備局との災害時応急対応の協定は以前からあったが、実践的な連携に踏み込んだ取り組みは初めてだね。
B 2024年は「能登半島地震」の被災地が「奥能登豪雨」に見舞われた。後発災害による被害拡大は復旧に必要な資材の不足や物流・生産の停滞をもたらす。それを食い止めるためにも、今まで以上の迅速な復旧は課題だ。建設コンサルタントは被災状況の初期調査から復旧計画の立案、設計など、復旧プロセスを技術的に支えるだけに、円滑な意思疎通は重要となる。
A 先日、大手建設コンサルタントと学識者を中心に構成する流域水管理研究所が建コン協を指定公共機関に指定するよう提言した。
C 被災地特有の地域リスクを反映した応急復旧や中期的な復興計画の提言などに建設コンサルタントの知見を今まで以上に生かすための仕組みを提起した。将来、原型復旧の原則を超えて、ビルドバックベターを実現しようとなれば建設コンサルタントの果たす割合はより大きくなる。
B 建コン協は、発注者との意見交換会の中で、災害対応の実務に既存業務を抱えた技術者をより派遣しやすくなるような措置を求めている。裏を返せば建設コンサルタントが復旧・復興の場面で活躍する余地はまだまだある。着実な解決・改善が大切だ。
◇全国で検証し2028年までにガイドライン策定
A 防災といえば、産業技術総合研究所が、道路を掘ることなく水道管の劣化状況を検査する新技術の実証実験を福岡市の市街地で始めた。どのような技術なのか。
D 水分を多く含む土壌ほど水道管の腐食リスクが高いことを利用し、無人走行車両(UGV)に取り付けた探査装置から高周波の交流電流を流して水道管周辺の土壌の電気抵抗を測り腐食性を推定するというものだ。測定速度は時速最大2㎞で、道路を掘削する管体調査と比べて短時間で広範囲に調査できる。
E 実証実験では、水道管の更新工事を予定している管路を対象に腐食リスクを評価し、その後実施する水道管の管体調査や土壌サンプリングの結果と比較する。併せて、コストや作業時間の削減、費用対効果などを検証する。
D 内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の一つで、共同研究機関のクボタグループと協力して福岡だけでなく、東京や大阪など全国のモデル地区で検証する。28年3月までに研究結果をまとめ、社会実装に向けたガイドラインを作成する見通しだ。
A 高度経済成長期に整備された水道管の老朽化は深刻だ。
E 全国の水道管路のうち2割以上が耐用年数の40年を超過した。その割合は年々増える一方で、更新された管路の割合は減っており、年間2万件超の漏水・破損事故が発生しているとされる。
C 全国では、人工衛星やAI(人工知能)を維持管理に活用する水道事業のDX(デジタルトランスフォーメーション)化、ウオーターPPPの導入を検討する動きがある。人口減少による担い手不足や限られた予算の中で、適切な維持管理・更新の方法を探る必要がある。