◇1カ月連続、夏季作業用の歩掛求める提言も
A 今年の夏も記録的な猛暑となり、屋外作業の建設業は厳しい労働環境が続いた。こうした中、国土交通省が直轄工事で猛暑期間の現場施工を避ける方針を打ち出した。
B 関東地方整備局宇都宮国道事務所が試行している猛暑休工を水平展開する考えだ。同事務所では、2023、24年度補正予算で発注した工事で、猛暑となる7、8月を休工にできる取り組みを独自に試みた。受発注者の協議により猛暑期間の休工が可能なことを特記仕様書に明記し、今年7月時点で舗装工事など6件に適用した。
A 夏季休工には業界団体から賛否の声があるようだ。
C 日本型枠工事業協会は、「1カ月の連続夏季休暇取得による生産性向上提言」を発表した。生産性が上がる10月から5月までの9カ月間は隔週の週休2日にする一方、7月下旬から8月下旬までの1カ月間は連続して夏季休暇にするという提案だ。
B 建設業は、全産業の平均に比べて年間休暇が少なく、労働時間が長い。長期休暇の取得で、産業イメージを高めて新規入職者増大につなげるとの狙いもある。
D 一方、今夏、国内歴代最高気温を更新した群馬県の建設業協会は、「夏季作業用の歩掛かりを策定する必要がある」と訴えている。7、8月の気温、湿度や暑さ指数(WBGT)の実測値を踏まえると、ほとんどの日は休憩時間確保が必須となるWBGT値28以上となり、作業時間が低下するとしている。その一方で、経費がかかるため安易に工期の延期をしないよう求めており、夏季休工には否定的な立場だ。
C 実際に、夏季休工を導入するためには課題は多い。ただ、働きやすい現場とすることは持続可能な業界に向けて必須の取り組みでもあり、今後さらに議論を深める必要がある。
◇形骸化する政府ルール、学生は「ピンポイント」
A とはいえ10月も半ばとなって、ようやく涼しくなってきた。秋と言えば話題は何だろう。
E 大学3年生にとっては、「就職、勝負の秋」だな。
C 政府ルール上は卒業前年の3月1日が就職情報解禁、選考解禁は6月だったはず。学生なら「読書の秋」では。
E そうとも言ってられないのが実態だ。企業取材班で今春から就活取材を進めているが、政府ルールは形骸化している。
D 今年3月の紙面で、マイナビが26年卒業予定の学生を対象にした内定調査の記事があった。土木・建築系学生の内定率は、3月初旬で6割を超えていたね。
B 就職情報解禁以前に選考が始まり、内定も出ているというわけか。
F その通り。先週、27年3月卒業予定の学部生・院生たちに話を聞いた。10月中に1次面接に臨む学生は1人、2人ではなかった。既に2次面接という学生もいたよ。
A 就活戦線が早まる一方で、学生はミスマッチ対策をどうしているのだろう。
F マイナビの調査だと、6月時点の学生1人当たりの内定保有社数は、近年の上昇傾向が一転、26年卒業予定者から減少に転じた。5日間以上の長期就業体験に力を入れる企業は増加傾向にあり、学生も1社1社に多くの時間をかける傾向だ。よく吟味し、候補を絞った上で就職活動を進める。マイナビ担当者は、こうした傾向を「ピンポイント就活」と総評している。
E ただ、結局やってみなければ分からない。就業経験がなく、理屈で言うなら、ミスマッチしない方が不思議だよ。雇用の流動化で“生え抜き”信仰はいずれ過去の産物になる。「ミスマッチが…」と騒ぐより、一歩目でつまずいたって、本来どうってことないという心理的安全性のある社会であってほしい。