【BIM未来図】家具BIMデータの行方(上) | 建設通信新聞Digital

11月12日 水曜日

B・C・I 未来図

【BIM未来図】家具BIMデータの行方(上)

間仕切りや造作は対象外に


 業務用家具メーカーがBIMファミリデータの標準化に向けて議論を始めた。主要メーカーの多くはオートデスクのBIMソフト『Revit』向け製品データを公開しているが、企業ごとに仕様が異なり、意匠設計や内装設計の両分野からデータの標準化を求める声が広がりつつある。「BIMを活用してよりよい空間をつくりたいという思いは設計者も一緒。われわれ家具メーカーが企業の枠を超えて標準化の議論を始めようではないか」。アダルの五味隆夫BIM推進事業室チーフが呼び掛ける形で、イトーキ、オカムラ、オリバー、コクヨなど6社のBIM担当が集まった。

アダルの五味氏


 6社は、今年2月から交流会という形で月1回のペースで意見を交わしてきた。五味氏は「われわれにとってのBIM標準化とは何かを考えるところから議論してきた。企業ごと、プロジェクトごとに標準化の在り方は異なる。それぞれの考え方を共有し、何が最良の道筋なのかを見定めながら一歩ずつ着実に進んでいきたい」と思いを込める。

 交流会では、標準化の在り方や必要性について議論するとともに、共有パラメーターの具体項目を洗い出す作業も進めてきた。意匠設計や内装設計の担当者とも意見交換し、家具メーカーとしてどういう観点から、製品データの標準化を進めていく必要があるか、今後進むべき道筋についても話し合ってきた。

 コクヨの川口りつ子グローバルワークプレイス事業本部デザイナーは「今まで企業ごとに製品のデータを公開してきたこともあり、われわれが求めるようなデータの活用がなされていない状況があった。交流会を通じてベースとなる標準化の必要項目を導き、それを出発点に標準化の実現に向けて本格的に議論を始めようと動き出した」と説明する。

 導き出した標準化の必要項目は13項目に達したが、その中から「データ更新頻度」「対象カテゴリー」「ファミリカテゴリー」「パラメーター・名称」「挿入起点」の五つを重点項目に絞り込んだ。対象カテゴリーは製品群が多岐にわたることから椅子、タスクチェア、ソファ、ベンチ、テーブルデスクに限定し、間仕切りや造作系などは対象から外した。パラメーターの情報についてもW(幅)、D(奥行き)、H(高さ)、座面高さ(SH)、ひじ掛け高さ(AH)に品名、品番、重量を加えた八つにとどめた。

 Revitのバージョンアップに伴うデータ更新の頻度を最適化するため、その時点で対象となる最も低いバージョンを選択することも決めた。意匠設計や内装設計では2-3年の頻度でRevitのバージョンを更新しているケースが多いことから、メーカーとしてもそれに合わせることが最適と判断し、現時点ではRevit2022を対象に定めた。さらには製品データの起点を明確に定めることで、設計時に家具製品データの最適な配置をしやすくすることも位置付けた。

 今年8月には、オートデスクが主催する形で業務用家具メーカーと内装ディスプレー会社による「家具に関するBIMの意見交換」が実現した。これまでメーカー6社が取り組んできた成果を内装各社に説明することで、BIMの標準化に向けて両者が意見を交わす初めての場となった。五味氏は「われわれの製品データを活用する内装ディスプレー各社から率直な意見をもらい、ともに標準化に向けた新たな一歩を踏み出したい」と呼び掛けた。

 

【公式ブログ】ほかの記事はこちらから

建設通信新聞電子版購読をご希望の方はこちら