【BIM未来図】家具BIMデータの行方(下) | 建設通信新聞Digital

11月14日 金曜日

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【BIM未来図】家具BIMデータの行方(下)

RUGから吉原氏、古川氏、村井氏が参加


 オートデスク主催の「家具に関するBIMの意見交換」には、業務用家具メーカー6社と内装ディスプレー会社7社に加え、BIMソフト『Revit』のユーザー会組織RUG(Revitユーザーグループ)から、会長の吉原和正日本設計生産系マネージメントグループ長兼BIM支援グループ長、副会長の古川智之久米設計設計推進本部DX室室長、意匠ワーキンググループ(WG)リーダーの村井一東京都市大学准教授がオブザーバーとして参加した。

 吉原氏はパラメーターリストについて「具体の目的をきちんと設定しなければ、標準化を実現したとしても、有効に使われない状況を生んでしまう。属性情報の項目が多ければ良いわけではなく、実際にどのように使われるかを踏まえ、整備していくことが何よりも大切」とし、「標準化後に最新データとしてメンテナンスしていく点も踏まえた議論をすべき」と強調した。

 古川氏は「数量の算出だけでなく、デザイン意図を伝える部分も標準化の目的としては大切になるが、あまり詳細度の高いデータにこだわらず、利用目的に見合った使い勝手のよい仕様を心掛けた方が良い」とアドバイスした。村井氏は「RUGの意匠ワーキンググループも、このような標準化について議論を継続しているが、同じデータであってもそれぞれの立場から見ようとする情報が違うという状況を前提として共有できるかが前進の鍵になる」とし、RUG意匠WGが取り組む「Room Rule Book」という共通指針づくりの考え方を紹介した。

 意匠WGには各企業の設計者が集まるが、日頃手掛けているビルディングタイプが違えば、Revitの使い方もそれぞれ異なっている。古川氏は「皆で突き詰めた議論をしていく中で、根っこの部分で設計の考え方ややり方が異なるため、ボタンを掛け違えているケースがあった。共通項として空間オブジェクトの入力や情報伝達の在り方をまとめるため、Room Rule Bookづくりが始まった」と、その経緯を説明した。

紹介されたRUG意匠WGの共通指針


 企業や所属の異なる設計者はそれぞれのルールでモデリングをしており、しかも意匠・構造・設備の連携に取り組む上では、異なる専門分野間での情報伝達に向けた調整が必要となる。それぞれがBIMの情報伝達に期待するものを見極める一つの手法としてRoom Rule Bookを位置付けている。村井氏は「家具データの議論でも形式的に標準化を急ぐのではなく、互いの情報の捉え方を把握、理解していくことがデータ連携の道筋を高めていく」と呼び掛けた。

 意見交換会にはイトーキ、オカムラ、オリバー、コクヨ、アダルなど業務用家具メーカー6社のBIM担当者が参加した。各社とも自社の営業戦略に基づいてBIMデータの提供を進めているだけに、今年2月の議論を始めた当初は「標準化の実現は難しいのではないか」と不安に包まれていたが、共有パラメーターの項目を洗い出し、一歩ずつ着実に標準化の議論を進める中で、その意識は「前に進むことができるのではないか」という期待に変わろうとしている。

 意見交換で実現した内装会社やRUG幹部との対話は、家具メーカー6社の担当者に対して標準化を後押しする貴重な機会になった。発起人として家具データの標準化を呼び掛けたアダルの五味隆夫BIM推進事業室チーフは「まだ道のりは長く険しいが、その先にある価値を皆で見いだしていきたい」と先を見据えている。今回の議論を踏まえ、6社は次のステップに進もうと前を向いている。BIM標準化に向けた業務用家具メーカーの挑戦の幕が開けた。

 

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