【2026年業界を読む・ゼネコン】生き残りをかけた"挑戦"の年へ | 建設通信新聞Digital

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【2026年業界を読む・ゼネコン】生き残りをかけた“挑戦”の年へ


 ゼネコン各社が活況を呈している。しかし、こうした状況が長く続くとみる向きは少ない。将来を見据えた各社の戦略に、これまで以上に違いが鮮明になりつつある。利益率の改善、アライアンスの構築、担い手の確保・育成、技術開発、社会貢献–。どこに力点を置くのか。経営トップのインタビューからは「挑戦」という言葉が相次いで語られる。その背景には、変わり続けなければ生き残れないという強い危機意識がにじむ。仕事を選べる“いま”、どう動くかで将来の明暗が分かれるだろう。

 堅調な国土強靱化関連予算や安全保障に関わる防衛費、旺盛な民間投資などを背景に、各社の業績は好調に推移している。大手・準大手ゼネコン25社の2025年3月期決算を見ると、連結売上高は飛島ホールディングスを除く24社のうち17社が前年同期比で増収となり、うち8社が過去最高を更新した。連結の営業損益も18社が増益で、2社が過去最高となるなど、数字は足元の好況を裏付ける。

 特に建築分野での利益率改善が際立つ。大手ゼネコントップが「建設工事物価に対する発注者の理解が進んできた」と語るように、改正建設業法の施行や業界団体による活動が奏功し、民間発工事でも好採算案件への入れ替えが進んでいる。

 26年3月期も増収増益を見通す企業は多く、期首予想からの上方修正も相次ぐ。設備系企業を中心に人手不足が指摘されるものの、「これから5年ぐらいはほぼ固まっている」(大手ゼネコントップ)、「10年先まで続く工事も受注している」(準大手ゼネコントップ)など、多くの企業が数年先までの工事を既に確保している。高市政権による日本成長戦略で示された17分野への投資にも期待が集まる。

 一方で、準大手ゼネコンのトップが「仕事を選択できる時代にいる」と表現するように、近年の利益率改善は自助努力の成果だけではなく、工事量が豊富な市況環境という外部要因に支えられている面が大きい。

 不確定要素が多い時代に、こうした市況が長く続くとは限らない。人口減少が進む中、中長期的な市場規模の縮小にどう対峙(たいじ)するかは、各社共通の最重要課題となっている。人口減少社会は担い手不足にも直結する。残業規制による労働時間の減少が、技術力の継承や維持・向上に影響を及ぼしているとの指摘もある。

 こうした中、改めて注目されているのが生産性だ。「各社を並べると、社員1人当たりの生産性に明確な違いがある」と準大手ゼネコントップが分析するように、全産業と比べて生産性が低い建設業界は、構造的な改善余地がなお大きい。限られた人数と時間の中で効率化を追求する動きは、今後さらに加速するだろう。

 人材確保を巡っては、「囲い込む」発想からの転換が求められている。挑戦を称賛し、人材の流動化を一定程度許容すれば、賃金がさらに上昇する可能性がある。その覚悟を経営として引き受けられるかが問われる。賃上げには原資が不可欠で、利益がなければ人事制度改革も成り立たない。だからこそ各社は、売り上げ規模だけでなく、社員1人当たりの付加価値に目を向け始めているのだ。

 ゼネコン各社は今、AI(人工知能)活用、M&A(企業の合併・買収)、海外事業の強化、多様な働き方への対応など、あらゆる手段を講じて将来への備えを進めている。短期・中期・長期という時間軸に加え、株主を含む多様なステークホルダーの期待にどう応えていくかという複合的な課題への対応が求められている。

 だからこそ、高い視座に立った経営判断が一段と問われる時代に入った。大手ゼネコントップが「適切な賃金水準を大前提として、ものづくりの楽しさを訴えれば、人口減少下でも建設業に人材は戻ってくる。大手の一角として責任を持って取り組んでいく」と語る言葉からは、自社の利益だけにとどまらず、産業全体の持続性を見据えた覚悟がにじむ。
(中村達郎)

 

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