【防災技術交流】日本×イタリア 海底設置型フラップゲート式可動防波堤でワークショップ | 建設通信新聞Digital

4月26日 金曜日

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【防災技術交流】日本×イタリア 海底設置型フラップゲート式可動防波堤でワークショップ

フラップゲートのイメージ

 海上・港湾・航空技術研究所港湾空港技術研究所は、沿岸災害の現状や災害への対策技術をテーマとした「日・伊沿岸防災に関る技術交流ワークショップ2017」を9月18、19の両日、イタリア・ベネチアで初めて開催した。日伊両国の参加者が沿岸防災インフラなどについて発表したほか、ベネチアで世界で初めて整備に着手した海底設置型フラップゲート式可動防波堤の建設状況を視察した。日本側の研究成果を提供するとともに、海底型フラップゲートの先進事例関係者との人脈を構築した。

フラップゲート固定のためのヒンジ作動用シリンダー

 ワークショップには、日本から早稲田大学の清宮理教授や全日本漁港建設協会の長野章会長を始め、沿岸技術研究センター、港湾空港技術研究所、エコー、Hitachi Zosen Europe、日立造船から計10人が参加した。イタリアからはベネチアの高潮対策プロジェクトの関係者やそのプロジェクトのゲート施工・架設の担当者、コンサルタントが出席した。長さ420mのバリア基礎ケーソン内部やフラップゲート固定のためのヒンジ作動用シリンダーなどを視察した。

ベネチアのフラップゲートの設置場所

 ベネチアでは、高潮対策「MOSE(モーゼ)計画」として、2003年から海底設置型フラップゲート式可動防波堤を建設している。同防波堤は、海底に一列の扉体を設置し、高潮や津波などの際に、空気を送り込んで扉体を起こすことで連続した防波堤を形成できる可動式で、高潮による洪水被害を防ぐ狙いだ。
 工事は最終段階を迎え、基礎部分、閘門(こうもん)は完成しており、フラップゲートの設置作業が行われている。完成予定は18年12月。運用方法や効果などの検討を経て最終的な運用開始は22年となる。本格運用後は入札で維持管理業者を選定する。
 

上空から見たリドインレット(右が北)

フラップゲートの使用予定年数は100年。維持管理は予備のフラップゲートを用意して、5年ごとに簡易な検査、補修、15年ごとに本格的な補修を行う予定だ。腐食は塗装と電気防食で防止する。
 日本でもフラップ式構造物の導入や検討が進んでいる。陸上設置型フラップゲート式陸閘については、港湾空港技術研究所と早大、沿岸技術研究センター、日立造船が中心となり研究開発を進めてきた。陸上設置型は水位が上がることで、空気の力を活用して自立閉そくすることができ、確実な作動と操作員の安全確保を両立する。国土交通省四国地方整備局による徳島県撫養海岸への導入を始め、各地で実用化・設置が進んでいる。

長さ420mの北バリア基礎ケーソン内部の通路

 海底設置型フラップ式構造物の場合は、大規模な構造物で海底に整備する必要があるため、難易度はより高くなる。日本では津波対策としての活用が見込まれるため、事前に可動させるタイミングを予測できないことや津波の到来まで時間が限られていること、地震を受けても構造物が可動することなど、導入に向けた検討事項は多岐にわたる。
 国内では和歌山県下津港で実証試験が行われたほか、岩手県大船渡漁港の復旧工事で導入を予定している。今回のワークショップの知見なども生かしながら本格的な導入を目指し、検討や実証が進められる。

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