【ベントレーカンファレンス'17〈下〉】プロジェクト運営の最重要は「変化」 普及の難しさ課題に | 建設通信新聞Digital

4月25日 木曜日

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【ベントレーカンファレンス’17〈下〉】プロジェクト運営の最重要は「変化」 普及の難しさ課題に

最高技術責任者のキース・ベントレー氏

 「プロジェクト運営では『変化』こそが最も重要だ」。イベントの開催に合わせ、ベントレー・システムズでは多くの新サービスの展開を明らかにした。その中でも特に「iModel 2.0」と名付けられたプロジェクトは、「ユーザーの『going digital(デジタル化)』をさらに進める」サービスとして創設者で最高技術責任者を務めるキース・ベントレー氏自らが参加者に詳細を語った。
 中心となるのは、「iModelHub」と呼ばれるクラウドサービスだ。同サービスではBIMを運用する過程で生じるデータの「変化」に着目、各部門の関係者がBIMデータに加えた変更を自動で同期して関係者全員へと配信する。BIM運用の過程で関係者が入力するのはデータのごく一部だが、変更を加えるたびにすべてのデータを関係者全員が共有するコストや手間は大きな負担となる。
 そこで「iModelHub」はプロジェクトの全変更内容を集約し、利用者は自分の業務に関係するデータを端末にダウンロードして作業を進め、そこで変更したデータが「iModelHub」に蓄えられていく。ベントレー氏はこれを「Data Lake(データの湖)」と表現し、最新のデータを全関係者が常に共有できる仕組みと強調した。「BIMには多くの可能性がある一方で、これまではデータの不整合からその価値は制限されてきた。『変化』を中心とした新たなサービスで、BIMの使い方は変えずにその価値を高めてくれる」と見通している。
 ただ、こうした生産性を革新する技術が開発されても、実際の普及には長い時間を要するのは世界共通の状況だ。
 「変化を求める声は多いが、変化しようとする者は少ないものだ」。シンガポールでBIMの建設産業への普及や教育などに取り組んできたBCAアカデミーのチェン・タイ・ファット副所長はこうした技術と需要のズレをそう表現する。イベント会場となったシンガポールでは2015年から延べ5000㎡以上の建築確認申請をBIMで提出することが義務付けられたが、当初からBIMの大きな需要があった訳ではない。BIMを活用した生産性向上には「政府が主導となって人材育成に取り組み、企業へのインセンティブ(優遇措置)を与え、需要を生み出す必要があった」と振り返る。
 学生への指導や優れた事例への表彰などの積み重ねがあったとはいえ、13年に延べ2万㎡以上の建築確認申請にBIMを義務化したのを皮切りに、わずか3年で急速に普及は進んだ。日本でも官民を挙げたBIMの活用が続き、緩やかだが着実に普及しようとしている。新しい技術を普及する秘訣についてチェン・タイ・ファット副所長は「技術の積極的な利用、挑戦の許容、機会の吟味、実現できるという確信」とした上で、最も大切なこととして詩人のサム・レベンソンの言葉を引用した。「時間を気にせず、とにかくやる。そしてやり続ける」   (飯田健人)

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