同賞は、建築系学生間の交流や建築教育の情報交換の場を提供し、建築文化の向上に寄与することを目的に1997年に創設された。今回は、大学や高専、専門学校など13校14学科から計40作品の応募があった。
審査は、JIA青森の堀内将人氏(堀内将人・新・建築設計代表)を委員長に、東北各県の地域会メンバーや賛助会などの代表者10人が担当した。
公開審査では、制作者によるプレゼンテーションを踏まえ、▽コンセプトの導き方▽社会性・歴史性▽空間性・造形力▽表現力--の4項目のほか、学生として将来への可能性が期待できる作品などを中心に評価し、各審査員の投票で入選作品を選定した。
最優秀賞の『鼓動する橋』は、東日本大震災に伴う津波や東京電力福島第一原子力発電所事故などで被災した福島県浪江町の請戸川鮭簗場(やなば)を再生させ、100年かけて文化を根付かせながら機能を拡張して観光地化するプロセスを提案した。
川に架ける簗場は、漁師の住居スペースや船着き場、鮭の生け簀(す)、食堂などで構成する。これらの施設は、初期段階では廃炉作業員宿舎として提供し、放流した鮭が帰ってくる漁の再開時期には廃炉作業の終了に伴い職を失った作業員らの新たな仕事場とする。さらに風評被害が収束し、帰ってくる鮭が多くなるにつれて漁師の住居は、観光客の宿舎へと機能を転換させるとした。
表彰式では、鈴木支部長が最優秀賞を受賞した柳沼さんに表彰状などを手渡し、栄誉をたたえた。
講評で堀内委員長は「学生の皆さんにとって、われわれ建築家と関わりを持ち、評価されることは成長する上で非常に価値がある」とし、参加者らに引き続き積極的な活動を促した。
最優秀を受賞した柳沼さんは「とても光栄だ。リアリティーを追求するため、協力してくれた現地の住民や先生、友人らに感謝したい」と語った。
式典後、鈴木支部長は「いずれも素晴らしい作品だった。特に最優秀は被災地の復興をまちづくりと原発の両面から捉えた未来につなげる提案で、パースの完成度も高かった」と評価した。
最優秀を除く入賞作品は、次のとおり(敬称略)。
〈優秀賞〉
▽共育の島嶼=岩渕友弥(仙台高専)、遠藤空瑠(同)、新田周都(同)▽道草HOUSE=神谷将大(東北大)。
〈みやぎ建設総合センター賞〉
▽n Place=小川諒介(秋田県立大)、佐々木椿(同)。
〈東北専門新聞連盟賞〉
▽白帯の誘因=平松建人(東北大)▽本育園=大沼亮太郎(仙台高専)、長濱柊(同)、堀井航太郎(同)。
〈河北新報社賞〉
▽街の色と生活のリズム七日町集合住宅=久湊美弥(東北芸術工科大)。
〈特別賞〉
▽軌跡=細田利軌(国際情報工科自動車大学校)、齋藤広樹(同)▽ねのねの学校~“見つけた”から“知りたい”へ~=秋山新作(東北芸術工科大)▽ハコ 人々を繋ぎ会わせる箱=佐藤友香(宮城大)、武井里帆(同)、吉田萌莉(同)。