【記者座談会】全建ブロック会議・改革の前に安定を/設計事務所の経営環境・好調も人材確保に苦戦 | 建設通信新聞Digital

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【記者座談会】全建ブロック会議・改革の前に安定を/設計事務所の経営環境・好調も人材確保に苦戦

全建ブロック会議では各地区とも働き方改革の原資を求める意見が相次いだ(写真は10月4日の関東甲信越地方ブロック会議)


A 10月4日から1カ月間にわたって、9地区で全国建設業協会、各建設業協会と国土交通省などの発注機関が意見を交わす2017年度の地域懇談会・ブロック会議が開かれた。地域建設業からはどのような声が上がったのかな。
B 建設産業界に働き方改革の風が強まる中、全国ゼネコンを横目に厳しい経営状況下にある地域建設業からは、改革の糧となる安定的で持続的な事業量の確保を訴える声が大きかったように思う。
C 週休2日の実現や生産性向上、処遇改善などの改革に取り組むにしても、その体力がない。企業あっての改革であり、まずは、改革を前進させる原資となる安定的な公共事業予算の確保と受注機会の拡大が地域建設業にとっては切実な課題になっている。事業量の地域間格差、企業間の利益の格差の「両極化傾向」が顕在化する中で、改革推進に地域建設業は二の足を踏まざるを得ないのが実態だ。
B 地域建設業の置かれた状況については国交省も理解を示し、改革に必要な施策を推進する意向を示す場面も多くみられた。地域建設業を抜きにして業界全体の改革は成就しないという点では、建協側と国交省の認識は一致している。
C 求めるばかりではなく、自主的な改革に取り組む動きも出始めている。全建の近藤晴貞会長は総括会見で、週休2日でも給与が減らないように環境を整えた結果、高卒5人、大卒1人の応募があったという会社のエピソードを披露した。処遇を改善すれば人は集まる好例だが、その会社がいま存続の危機にさらされているというのが地域建設業の置かれた実態を表している。多くの地域建設業が抱える懸念を払拭するためにも、やはり安定的で持続的な公共事業予算の確保が求められている。

建築設計事務所の経営環境 設計・監理収入で明暗くっきり

A 話は変わるけど、建築設計事務所の経営環境はどうだろう。
D 7月に日刊建設通信新聞社が実施したアンケート結果を見ると、この1年間の直近決算業績は大手組織事務所を中心におおむね好調と言える。トップ30事務所の顔ぶれも安定している。回答を得た79事務所のうち、前回と比較可能な75事務所の設計・監理収入では6割超の46事務所が前期比プラスとなっている。2桁増も17事務所あった。一方でマイナスとなった29事務所のうち2桁減は10事務所。用途別のランキングを見ても大きく伸ばした事務所がある一方でマイナス幅の大きい事務所も多く、明暗がくっきりと分かれた印象がある。
E もちろん数字が伸びればそれでいいというわけでもない。大手事務所の中にも急激な伸びはギャップが大きくなるため、ダメージを警戒するトップも少なくない。ただ、公共建築では大手が照準を当てるプロジェクトはプロポーザルによる設計者選定が主流となるだけに力を抜くわけにもいかず、どう選別受注するかは悩みどころだ。
D 所員数に着目すると、もともと人数が多い事務所ほど、この1年でさらに人を増やしている傾向にある。前年に比べて売上高が増えている事務所は当然のこと、前期比マイナスでも数十人単位で増やしている事務所もある。
A 将来を見据えての有資格者育成や世代交代も視野にあるのだろうか。
E 資格者数では1級建築士は増えているが、意匠に比べて構造や設備の1級は大きな増減が見られない。特に設備技術者の確保はゼネコンや発注者が競合相手となるだけにどの事務所も苦戦している。一方で、コスト管理士が増えているところにコストコントロールを重視する意識がうかがえるのではないか。

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