【無電柱化の日】「見えないインフラ」で安全・美観・コスト削減を 知事と語るイベント開催 | 建設通信新聞Digital

4月26日 金曜日

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【無電柱化の日】「見えないインフラ」で安全・美観・コスト削減を 知事と語るイベント開催

 日本で当たり前の風景となっている電柱をもう一度見直し、無電柱化によって、東京を世界に誇れる安全で美しいまちに--。11月10日の無電柱化の日に合わせ、東京都は10日、「小池知事と語る、東京の無電柱化」と題したイベントを都庁で開いた=写真。小池百合子知事は2020年の東京五輪を目標に「見えないインフラ」を進める必要性を強調し、「心・技・体」で取り組むと話した。イベントは放送プロデューサーのデーブ・スペクター氏、元文化庁長官の近藤誠一氏がコメンテーターを務め、約400人が参加した

小池百合子知事

 小池知事は「無電柱化推進に向け法律が、東京都でも条例ができ、制度面の準備ができた。これからどうやって技術などを進めるかが課題」と話し、「20世紀は見せるインフラだったが、これからは日本橋の(首都高速道路)地中化のように見えないインフラへと変わるのではないか。20年の東京五輪はインフラを変えていくいい機会になる」と力を込めた。
 無電柱化の目的として、「防災、歩行空間の確保、良好な都市景観の創出」を挙げ、「電柱は復旧のため電力を早く通すことができることから、テンポラリー(一時的)に建てたものが、いつの間にか恒久的にある電柱に変わってしまい、見慣れていく。それをどこかで断たないと駄目だ」との考えを示した。

デーブ・スペクター氏

 スペクター氏は、電柱の倒壊による停電もあることから、「電柱は海外では欧州、まして米国の都会ではまったくない。東京のように密集している街は、いつか無電柱化ができたらと思っていた」と語った。国際競争の意味でも「東京がずっとアジアをリードしてきたが、シンガポールなどが迫ってきている。アジア間の競争を考えると急いだ方がいい」と指摘した。
 小池知事は「電線の地中化は、ものつくり大国・日本に新たな成長戦略として、活用できるのではないか。電柱と無電柱化の場合で、コストが20倍違うと言われているが、今後安くなることを努力することで、加速度的に進んでいく」と自信を見せた。
 さらに「もっと美しくしたいという心、埋めるときの技術、進めるために固定資産税などをどうするかという体制。この心・技・体3つが整えば、物事はうまく進む。その集大成として、東京五輪はいい目標だ。心・技・体の象徴を世界に発信できるのではないか」と述べた。
 東京都は、センターコアエリア内(中央環状線内側)の都道の無電柱化を19年度までに完了させ、第一次緊急輸送道路を24年度までに50%完了する目標を掲げている。コスト縮減に向けた都の取り組みとして、特殊部の小型化により材料費と土工の縮減を図る新方式の検討、材料費削減や施工性を向上する新たな管路材料の採用、浅層化などが紹介された。

近藤誠一氏

 近藤氏は、日本の縦割り社会の弊害を指摘した。「ガス工事で掘り起こして埋めて、水道工事をやって、さらにガス工事を進めるなら一度にやればいい。ガス管を代えるのなら、その時に電線も戻して共同溝にすれば1回で済む。だが役所や担当が違うのでばらばらにやってしまう」と話した。さらに「電柱をそのままにしておくことによるコストもかかっている。技術革新、知恵、異分野との連携により無電柱化のコスト削減はできる。やる価値は十分ある」と主張した。
 小池知事は「当たり前のことをもう一度改めて考えてみよう。地域から声を出してもらうことが、“心”の部分になる」と、地域による問題意識の必要性を訴えた。

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