【現場最前線】100年以上前の堤防補強跡があらわに! 開削幅185mの釈水水門新設工事 | 建設通信新聞Digital

4月20日 土曜日

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【現場最前線】100年以上前の堤防補強跡があらわに! 開削幅185mの釈水水門新設工事

開削によってあらわになった堤防の断面から、当時の材質や施工法などを推測できる

 関東地方整備局利根川上流河川事務所は、茨城県古河市の利根川で、水門を新設する工事を安藤ハザマの施工で進めている。支川の水を排水するとともに、洪水から地域を守る水門の本体構築に向け、基礎杭を打ち込む作業を11月上旬に始めた。堤防の開削は終えており、100年以上前に行われた堤防補強の施工方法などを知ることができる歴史的価値が高い断面があらわになっている。
 この工事は「H28釈水水門新設工事」。WTO対象で2016年9月に開札し、安藤ハザマが23億4320万円(税別)で獲得した。工期は19年3月28日まで。
 古河市の利根川左岸に設置されている釈水樋管は、完成から90年超が経過し、老朽化が進行している。支川である女沼川の流域で都市化が進んだことにより、排水能力に不足が生じてきたため、女沼川を管理する県の整備計画に併せ、直轄で水門を新設する。排水能力は樋管の4.6倍となる秒速55m3に高める。
 仮締め切り工を5月に完了した。鋼矢板の長さは1枚当たり21.5mで、このうち地下部に12.6mを埋め、地上部には8.9mが突き出た状態となる。これを長さ295mにわたって幅9.5mの二重にしている。
 安藤ハザマの井上直樹所長は「地上部にこれだけ突き出た二重締め切りはなかなかなく、しっかりやらないと締め切らないので大変だった」と、これまでの作業で仮締め切りに最も気を使ったと話す。水位が上昇した10月の台風21号では、堤防に代わって治水効果を発揮した。
 続く堤防開削工は9月に終えた。何度も堤防の補強がされた個所で、100年以上前に行われたとみられる補強の跡も層になって断面に現れており、当時の材質や施工方法などを知ることができる。利根川上流河川事務所の伊藤一十三副所長は「断面を見て、かつては人力で施工していたのではないかと推測される。貴重なものだ」と語る。また、開削幅が185mと、これだけ大きな工事は発注者もなかなか目にする機会がないため、同事務所では若手職員の見学会を開催するなど、技術を承継する格好の現場として活用している。
 水門の基礎杭を打ち込んだ後、18年2月ごろからいよいよ本体の構築に入る。水門の規模は幅19m、高さ4m。カーテンウォール形式を採用し、「水門が必要な部分だけ開くのが特徴」(伊藤副所長)。約1年後の18年10月には新たな水門の姿が見られそうだ。

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