【リナ・ボ・バルディ】あいまいに連続しすべてに関わる「実践の建築」の人 和多利、妹島、塚本3氏が語り合う | 建設通信新聞Digital

4月24日 水曜日

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【リナ・ボ・バルディ】あいまいに連続しすべてに関わる「実践の建築」の人 和多利、妹島、塚本3氏が語り合う

右から塚本氏、妹島氏、和多利氏

 ブラジル建築の近代化、民主化を進め、ブラジル文化の中心人物であり続けた女性建築家リナ・ボ・バルディの作品と幅広い創作活動を紹介する日本初の書籍『リナ・ボ・バルディ--ブラジルにもっとも愛された建築家』(TOTO出版)の発行を祝う会が11月28日、ブラジル大使館主催により、東京都港区の同大使館で開かれた。

アンドレ・コヘーア・ド・ラーゴ駐日ブラジル大使

 この日は、建築評論家としても知られる駐日ブラジル大使のアンドレ・コヘーア・ド・ラーゴ氏がリナの建築家としての優れた才能に言及しながらも、その全盛期がブラジルの軍事政権下であったことから「世界から忘れられた建築家だった」と指摘。「この時代を掘り起こす本が日本から出版されることでリナの建築とデザインに対する評価が高まっていくとともに、必ずや新しい発見があると確信している」と語った。
 リナの生涯と作品を紹介する展覧会を2年前に開催、今回の書籍も監修したワタリウム美術館の和多利恵津子館長と、建築家の妹島和世氏、塚本由晴氏によるトークでは、その強烈な空間体験とともにリナ作品の魅力を縦横に語り合った。塚本氏は「ものすごくモダンな建築と思っていた」という処女作である自邸「ガラスの家」を初めて訪れたときに「土着的なものとモダンなものが全く違和感なく融合している建築だと知って驚いた」と振り返り、妹島氏も「両極端が混じり合うところが魅力的な人」と応じた。
 さらに妹島氏は「展示室と街が1つに連続してすばらしい」という代表作のサンパウロ美術館など「ここまでが建築でここからが街ということもなくあいまいに連続していくことが魅力」であり「いろいろなことを考えさせられるきっかけをもらえる人」だと語った。
 一方、塚本氏はSESCポンペイア文化センターやテアトロ・オフィシナを挙げながら、「“施設”ではない建築をつくれることにかなり早い時期に気付いて実際につくった」ことに建築家としての特質を見いだし、「建物が完成して終わりではなく、作品が閉じていない。運営まですべて関わっている。作品というより実践の建築」だと評した。

『リナ・ボ・バルディ ブラジルにもっとも愛された建築家』(TOTO出版・4300円+税)

 ブラジルという多民族で複雑な社会階層が混在する国で、「クリエーションは人びとの自由な世界をつくるためのものでなければならない」という揺るぎない信念を持って、民衆たちの真に開かれた場所を、建築を利用する人びとのために、人びととともに考え、追求した女性建築家リナ・ボ・バルディ。
 1914年ローマに生まれイタリアで建築を学び実務を経験し、美術評論家の夫とともに第2次世界大戦後にブラジルに移住。51年に自邸「ガラスの家」を建設すると同時にブラジル国民となった。92年に亡くなるまでこの自邸で暮らし、「サンパウロ美術館」「SESCポンペイア文化センター」「テアトロ・オフィシナ」など、近代建築の理論とブラジル文化の土着的な魅力を兼ね備えた建築を生みだした。
 本書は主要な建築作品に加え、家具やキュレーション、舞台や植栽のデザインなど幅広い創作活動を網羅。建築家の妹島和世氏と塚本由晴氏の対談も収録するなど、そのエネルギーと自由に満ちた作品と生涯を多角的な視点から再評価し、現在の建築界に位置付ける。知られざる女性建築家の魅力に迫る日本初の作品集にして決定版となる。

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