【記者座談会】国交省大規模事業の打ち出し相次ぐ 道路整備加速や耐震化、緊急治水対策 | 建設通信新聞Digital

5月17日 金曜日

公式ブログ

【記者座談会】国交省大規模事業の打ち出し相次ぐ 道路整備加速や耐震化、緊急治水対策

A 国土交通省で大規模事業の打ち出しが相次いだね。

全国の中小河川で流下能力を向上させ、多数の家屋や重要な施設の浸水被害を解消する


B 道路関係事業では、国交省が財務省に対して、大都市圏の環状道路の整備などの投資のために、1兆5000億円の財政融資を要求した。現在の低金利状況を生かした金利負担の軽減で捻出される1兆円程度の資金を、首都圏中央連絡自動車道(圏央道)と東海環状自動車道の整備加速や橋梁の耐震対策に充てる予定だ。
A 財政投融資の活用は、一般会計の社会資本整備予算総額の抑制がいわれている中で、第2の予算として、国の借金がふくらむとの懸念もある。
C 調達する資金の用途は、暫定2車線道路の4車線化など環状道路の早期完成や耐震対策で、整備することが既に決まっている事業だ。新たに整備路線を増やしたわけではなく、あくまで整備加速に使うためで、その批判は当てはまらない。
D リニア中央新幹線の整備に関しても計3兆円を財投で確保することで、前倒しの完成が実現する。圏央道では、完成区間でストック効果が発揮されていることから、低金利で資金調達し、早期に供用を開始することで投下資金を回収できるという考え方だ。
B 圏央道や東海環状自動車道については、数千億円規模の事業となることから、国交省内では投資の裏付けが担保されることで、安定的・持続的な事業確保につながるという声もある。
A 投資内容の正式決定はいつごろか。
C 財務、国交両省が協議し、年末にまとめる2018年度の財政投融資計画に盛り込まれる見通しだ。高速道路の整備への財投活用は前例がないため、詳細がいつ明らかになるかは未定だが、対象路線は国交省と事業を実施する高速道路会社が精査することになる。
A 一方の河川関係事業の方は。
E ことし7月に発生した九州北部豪雨などを受けて、国交省が都道府県などと連携して実施した全国約2万の中小河川の緊急点検の結果がまとまった。対策費用として、20年度までに約3700億円を投じて、土砂・流木対策と再度の氾らん防止対策、洪水時の水位監視対策を実施することになる。
A 対策の実施個所はどうなっている。
F 事業規模の大小はあるものの、47都道府県すべてで対策プロジェクトを実施する予定だ。土砂・流木対策では、長野県の52渓流(33河川)や広島県の35渓流(18河川)が多く、再度の氾濫防止対策では、岩手県の44.0㎞(7河川)、北海道の42.3㎞(21河川)などが事業対象延長として長い。水位計は北海道の587カ所を始め、全国で計5755カ所に新たに設置する。
G 中小河川緊急治水対策とは別に、福岡、大分、佐賀、熊本の4県で九州北部豪雨緊急治水対策も実施する。福岡県の赤谷川などでは、改正水防法で可能になった国による権限代行を、本格復旧で初めて適用することが決まった。中小河川対策と一部重複する部分もあるが、こちらも5カ年で1670億円を投じる。九州の治水対策も大規模なプロジェクトといえる。
A 事業のスケジュールはどうなっている。
E “緊急点検”と銘打っている以上、17年度補正予算で対応すると考えるのが、順当だろう。石井啓一国交相も会見の中で、「早急に実施するため、補正予算での支援など、あらゆる手段を検討する」と述べていた。
F 現場状況によっては、出水期や厳寒期の施工が困難な場所もある。約3年でこの規模の事業を完了するためには、早期の事業着手が肝要といえるだろう。

建設通信新聞の見本紙をご希望の方はこちら