【記者座談会】東日本大震災から7年 復興の総仕上げ期間に | 建設通信新聞Digital

5月16日 木曜日

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【記者座談会】東日本大震災から7年 復興の総仕上げ期間に

A 東日本大震災から7年。復興の総仕上げ期間として、一部のインフラ整備などは完了に向けためどが見えてきた。

除染作業はほぼ完了。今後、中間貯蔵施設への除染土壌輸送が本格化する(大熊町)

B 吉野正芳復興相は「福島も含めた住まいの再建は3月に約9割が完了する予定だ。復興道路・復興支援道路では全体延長の約9割が開通または開通予定となっている。全体として着実に進捗している」と説明している。
A 原発被災地域がある福島の復興・再生はどうか。
C 双葉町などの帰還困難区域に設ける特定復興再生拠点区域の復興再生計画が認定され、今後も中長期的な支援を展開する。国は前面に立って取り組んでいく方針だ。具体的には、復興庁が廃止となる2020年度末以降の支援体制の検討が始まった。
D 同庁は福島12市町村に対する聞き取り調査を進めている。ヒアリングなどに基づき、政府や自民党の東日本大震災復興加速化本部でポスト復興庁のあり方を示していく。
B 一方、東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う除染は、今月末までに帰還困難区域を除き、すべての面的除染が完了する。今後は、除去土壌の公共事業での再生利用と、中間貯蔵施設への輸送が本格化する。
C 環境省直轄の面的除染は17年3月末に完了した。市町村除染は、1月末時点で福島県内33市町村が除染進捗率100%、除染継続中の福島、二本松、本宮の3市も3月末までに完了する見込みだ。福島県外7県では、17年3月末までに56市町村が終了している。帰還困難区域の除染は、特定復興再生拠点区域整備の中で対応していく。
E 除染はとにかく「人海戦術」だったといえる。直轄では延べ約1360万人、市町村で延べ約1800万人以上の作業員が除染作業に携わった。推計で福島県外も含め約1650万m3の土壌や廃棄物を除去した。
F 港湾関係では、岩手県の釜石港湾口防波堤と福島県の相馬港沖防波堤が3月で復旧工事の完了を迎え、いよいよ全港湾の復旧事業を終える。港湾はさまざまな産業の拠点であり、震災で疲弊した地域の復興推進や産業の再生の後押しが期待される。
E 復興のシンボルづくりも進む。昨年9月に福島県浪江町における国営追悼・祈念施設の設置が閣議決定された。これで、先行して昨年3月に着工した岩手県陸前高田市と宮城県石巻市を合わせて被災3県に犠牲者への追悼と鎮魂、日本の再生に向けた強い意志を国内外に発信する施設が整備されることになる。
D ソフト面の施策では、昨年12月の復興加速化会議で石井啓一国土交通相が『東北復興働き方・人づくり改革プロジェクト』と銘打った施策を打ち出した。「復興促進アドバイザー」による自治体復興支援などを新たに盛り込んだほか、ICT活用工事を自治体および中小企業に普及・促進させるため「ICT活用工事推進『見える化』」などに取り組む。
B プロジェクトの施策の柱の1つとなっている“業務改善による効率化”では、ウェアラブルカメラなどを使って遠隔地から現場の状況を確認できる技術の試行が東北各地でスタート。特に被災地の現場周辺はインフラ整備が完了していない地域も多いことから、遠隔地から確認できる効率的な技術への期待は大きい。
A 人づくり支援では、昨年3月に設置した官民連携による若手土木技術者の育成組織「東北土木技術人材育成協議会」が拡充された。これまでの東北地方整備局と建設関連5団体に、東北6県・仙台市および業界2団体が新たに加わったことで、自治体職員も技術講習会の受講が可能になり、職員の技術力向上につながる。