【建築の日本展】展示資料総数400点以上! 本質に迫る展覧会@森美術館 9/17まで | 建設通信新聞Digital

4月27日 土曜日

公式ブログ

【建築の日本展】展示資料総数400点以上! 本質に迫る展覧会@森美術館 9/17まで

 森美術館の開館15周年記念展「建築の日本展:その遺伝子がもたらすもの」が、東京都港区の六本木ヒルズにある同美術館で4月25日から開かれている。日本の現代建築が国際的に高く評価される中、その遺伝子を読み解くかぎとなる9つの特質を代表的な建築家の実作100プロジェクトを通して考察するもので、展示資料総数400点以上という圧倒的なスケールで日本の建築の過去と現在、そして未来像を照らす内容になっている。
 森美術館で「大規模な建築展は6年半ぶり」(南條史生館長)という今回の展覧会。サブテーマに掲げた「世界が魅せられた日本建築、その本質に迫る!」のとおり、古代から現代まで日本の建築の底流に潜む遺伝子を考察し、過去から現在、未来を思考する。南條氏は「いま最も勢いがあり、海外でも評価される日本を代表する文化が建築だ。その現代日本建築の特徴とは何か、そのメカニズムを探りたい」と、建築展全体のイメージを語る。
 監修を務めた建築家・建築史家の藤森照信東大名誉教授も、「丹下健三以降、日本の現代建築は世界の最先端に躍り出ていまに至るが、それには日本の伝統的建築の遺伝子が建築家本人の自覚の有無とは別に大きく関係している」と指摘。伝統と現代の見えざる関係を代表的建築家の実践の中から見いだす展示内容となっている。
 その遺伝子を読み解くキーワードに挙げたのは、(1)可能性としての木造(2)超越する美学(3)安らかなる屋根(4)建築としての工芸(5)連なる空間(6)開かれた折衷(7)集まって生きる形(8)発見された日本(9)共生する自然--という9つの特質だ。
 その意図について共同企画者で建築史家の倉方俊輔大阪市立大准教授は、「明治以降、わずか150年で日本が世界を代表する建築大国になった理由には、何か遺伝子があるのではないかと考えた。いずれも“日本建築とは○○である”を当てはめることができる」と、個人の名前やグループに依らない展示のコンセプトを明かす。
 このうち、日本の木造文化の技と思想、未来の可能性を伝える「可能性としての木造」では、北川原温氏による「ミラノ国際博覧会2015日本館 木組インフィニティ」を紀州産のひのきで再制作。会場入り口に設けられた持続可能性を体現する立体木格子が来場者に期待を抱かせる。
 「建築としての工芸」では、見どころの1つに挙げている千利休作と伝えられる現存する日本最古の茶室建築・国宝「待庵」を原寸大で再現。“わび”の思想を空間化した極小空間を体験することができる。

千利休作の茶室・国宝待庵を原寸で再現

 「連なる空間」には、丹下健三の自邸を3分の1スケールで再現した巨大模型が登場する。その隣には香川県の協力を得て、丹下が設計した香川県庁舎で実際に使用されているモダニズムの名作家具のオリジナルで構成されたブックラウンジを開設している。

丹下健三の自邸を3分の1スケールで再現した巨大模型

 目玉の1つでもある世界的なクリエーティブ集団・ライゾマティクス・アーキテクツによる「パワー・オブ・スケール」は、レーザーファイバーと映像で名建築の大小さまざまなスケール感を原寸で再現。ダイナミズムを3Dで体感できる体験型インスタレーションとして設けている。
 このほか、同展では「書籍や運動、技術の一つひとつをプロジェクトとして紹介」(前田尚武森美術館デザインプログラムマネジャー)している。大工棟梁に代々受け継がれ、江戸時代に広く普及した秘伝書や、擬洋風建築の模型、明治後期にドイツで発刊されたフランク・ロイド・ライトの作品集など、建築史における学術的に貴重な資料を展示しているほか、国際的に活躍する日本人建築家の最新プロジェクトなども一挙公開している。

パワー・オブ・スケール、原寸再現したさまざまな建築空間を3Dで体感できる

 また、今回の建築展では、森美術館と若手建築家の川勝真一氏、工藤桃子氏、元木大輔氏とグラフィックデザイナーたちが協働し、さまざまな鑑賞者に配慮した画期的な展示デザインを実現。高さ5.5mの壁を3段階のエリアに分割し、上部の遠景には大型映像や写真、言葉などを配置。中景には展示の核となる資料を配し、近景や解説などの詳細情報を掲出することで、鑑賞者が自分の興味や関心に合わせて情報を自由に選択し、鑑賞することができる。
 会期は9月17日まで。開館時間は午前10時から午後10時(火曜日は5時)まで。入館料は一般1800円。問い合わせは電話03-5777-8600。

建設通信新聞の見本紙をご希望の方はこちら