【18年7月豪雨】「想定外」といかに向き合うか "地域の守り手"と「国土強靱化」の視点 | 建設通信新聞Digital

4月17日 水曜日

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【18年7月豪雨】「想定外」といかに向き合うか “地域の守り手”と「国土強靱化」の視点

 西日本を直撃した「2018年7月豪雨」からの復旧に“地域の守り手”である建設企業が奔走している。これまでも激甚化・集中化する自然災害への防災・減災は最優先かつ喫緊の課題とされてきた。その「想定」をも上回ってしまう自然災害にどう向き合っていくべきか。インフラの整備・増強といった対策や原資となる「財源」確保に大きな課題が突きつけられている。
 キーワードとなるのが、猛威をふるう自然災害に耐えうるだけの強靱な国土を築き上げていく「国土強靱化」の視点だろう。

広島市内の被災地

 昨年の九州北部豪雨など、全国で記録的な豪雨災害や地震による被害が続発。近年という枠の中だけでみても、11年の東日本大震災や、14年8月の広島豪雨土砂災害、16年4月に発生した熊本地震など、大規模な自然災害が襲い来るたびに、人々はその重要性を目の当たりにしてきた。
 防災・減災への重点投資を推進する国土交通省の公共事業関係費は近年、安定的に推移。当初予算ベースでみれば、緩やかに微増する1つの流れを堅持している状況にある。
 しかし、これだけ広範囲かつ甚大な被害を前にすれば、これまで進めてきた対策、あるいは微増を続ける公共投資が果たして必要な規模を満足しているのかどうか、再考すべきタイミングにある気がしてならない。
 政府は、10日に閣議了解した『19年度予算の概算要求に当たっての基本的な方針』に「引き続き、手を緩めることなく、本格的な歳出改革に取り組む」と明記した。
 「施策の優先順位を洗い直し、無駄を徹底して排除しつつ、予算の中身を大胆に重点化する」とあるように、継続して公共投資の抑制に取り組もうという財務省のスタンスが透けて見えなくもない。
 災害復旧など当面の対応は、18年度の当初予算に計上している予備費などを活用していくことになるが、麻生太郎財務相が10日の閣議後の会見で「(予備費で)不足したら補正予算を考える」と述べているように、今後の被害の状況によっては、補正予算の編成が焦点の1つとして浮上してくることになる。
 実際にこの6月に最大震度6弱を記録した大阪北部地震が発生したばかり。自民党の竹下亘総務会長が、9日の記者会見で「補正(予算)でも大胆に対応していかなきゃいかん」と発言しているように、予備費だけで、この豪雨や地震被害の復旧費用を賄い切れないという見方も広がる。
 土木学会が6月に公表した、南海トラフ地震や首都直下地震など「『国難』をもたらす巨大災害対策についての技術検討報告」をみても、自然災害による致命的な経済損失を回避する手段として、道路や港湾、堤防など公共インフラの整備・増強といった着実なハード対策が必要であるということは明らかだ。
 特に地震や津波に対する「耐震強化」に要する費用は南海トラフ地震が38兆円以上、首都直下地震は10兆円以上と試算。それを15年程度で完了させるための「長期プラン」の策定だけでなく、この長期プランの実行に必要な「制度・組織・人材育成」と「財源」確保の重要性を訴えている。

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