【記者座談会】新国立競技場整備にスライド条項適用/ぼうさいこくたい2018 | 建設通信新聞Digital

5月8日 水曜日

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【記者座談会】新国立競技場整備にスライド条項適用/ぼうさいこくたい2018

A 新国立競技場整備工事にスライド条項が適用される見通しになった。発注者の日本スポーツ振興センター(JSC)は、どういう反応をしているのかな。
B JSCとしては法律に基づいた制度の1つとして、年内の契約変更に向けて粛々と進めている感じだ。
C 今回適用するのはインフレスライドだが、個別資材価格の上昇など特殊な事情による単品スライドと違い、近年はこれがほとんどを占める。言いかえれば、対象となる労務費が上昇していることの裏返しだね。
B 大成建設JVが適用申請したのが4月中旬。このタイミングは、国土交通省による毎年3月の労務単価改定を受けての動きと言える。
A ということは、新国立競技場の完成は来年11月末だから、3月以降にもう一度申請する可能性があるね。
C 残工事の“線引き”をどこにするか注目だ。例えば、壁が立ち上がっていなくても、使用するパネルなどの資材を搬入していれば出来形数量に計上するなど、『広めに取り扱うこと』が運用マニュアルで通知されている。
B スポーツ紙を中心に一般紙も注目している。普段聞き慣れない『スライド』に興味があるようだけど、一般市民が建設工事の仕組みを理解するきっかけにつながれば幸いだね。

国家プロジェクトである新国立競技場にも工事費上昇の影響が広がっている (7月18日撮影)

自分ごととして巨大地震に事前の備えを

A 一般への認知を広げるという意味では13、14の両日、東京ビッグサイトなどで開かれた防災推進国民大会(ぼうさいこくたい2018)は大にぎわいだったようだね。
D 豪雨災害や台風、地震など、ことしは特に自然災害が多発しただけに防災に対する市民の関心も高かったのではないかな。全国建設業協会がプレゼンブース出展したほか、日本建設業連合会がポスターセッションに参加するなど、建設業関連各団体も参加しており、会場には家族連れも多く訪れていた。
E 56学会でつくる防災学術連携体と日本学術会議が主催したシンポジウムでも従来の専門家を対象とした発表ではなく、市民に分かりやすい平易な言葉で防災に関する最新の知見を伝えようという姿勢が明確に表れていた。
D 共通して訴えていたのは自分の身は自分で守る意識を持つことの重要性だ。首都直下地震の切迫性が高まる中で、いかに自分ごととして災害に備えるか具体的な手立てを示していた。
E 被害を軽減するためには事前の備えが必要だということも数値的な根拠を示しながら明確に説明していた。首都直下地震が起きれば宅地での液状化対策も必要だが、緊急輸送道路が液状化による段差で通行できなくなると消防や人命救助、救援物資輸送などに大きな支障が生じる。沈下などが予測される個所に簡易な対策を講じることで都民の生命・財産が守られることになる。
D 避難訓練とともに、初期消火や救援救護活動など、逃げないで被害に立ち向かう発災対応型訓練の必要性や逃げる必要のないまち・建物づくりの重要性も指摘された。
E 震度7クラスの巨大地震が東京で発生した場合、大量の帰宅困難者が一斉帰宅したら、群衆なだれ的な人的被害のリスクが高まることもビッグデータシミュレーションで明らかにされた。都心の企業が従業員の一斉帰宅を抑制することで2次被害の拡大を未然に防ぐという指摘は傾聴に値すると感じた。
A 阪神・淡路大震災の復興事業を踏襲すると首都直下地震の復興には国の一般会計予算に匹敵する巨額の事業費が必要になる。事前防災・事前復興に取り組むことが、そもそもの被害を軽減し膨大な国費を使わずに済むのだということを国民の共通理解としていくことが重要だ。

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