【米を売り、電気を売る農業へ】西野建設が稲作農地活用してソーラーシェアリング発電 | 建設通信新聞Digital

4月20日 土曜日

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【米を売り、電気を売る農業へ】西野建設が稲作農地活用してソーラーシェアリング発電

 西野建設(徳島県阿南市、西野賢太郎社長)は、「稲作農地を活用したソーラーシェアリング発電」事業の実証実験に取り組んでいる。阿南工業高等専門学校と共同で研究・開発したもので、阿南市七見町の「七見町第1営農型太陽光発電所」で実証実験を本格的に開始した。西野社長は「農業収入と売電収入を得る農業の可能性を模索し、『米を作り、電気を売ってもうかる農業へ』という新しいビジネスモデルを農業従事者の皆さんに提案していきたい」と話している。

ソーラーパネルの設置状況

 このソーラーシェアリングは、太陽光発電と農作物栽培をシェアする事業で、農作物に必要な日射量を保ちながら、太陽光発電を運用するもの。阿南高専との共同研究は2年前にスタートし、第1実証実験地の七見町第1営農型太陽光発電所では9月に資材搬入を開始し、ソーラーパネルの設置工事などを進めていた。用地面積は2983㎡で、農地転用の必要はなく、固定資産税は農地のままという。
 ソーラーパネルは国産メーカーのネクストエナジー製320枚を設置している。ソーラーパネルの支柱・架台の材質はアルミ合金で耐久性に優れ、台風などの災害時にも損傷する確率が低いのが特徴だ。
 縦横支柱間隔は4.9m、架台の最低地上高は2.7mで、耕作面積も最大限に保つ効率的な設計を施しているため、田植機やコンバインなどの農耕機械による農作業も問題なく行える。また、遮光率は約30%で、作柄への影響は問題がないという。

田植機やコンバインなどの農耕機械による農作業も可能な高さを確保

 同発電所での年間予測発電量は9万9030kW時で、年間売電想定額は約192万円となっている。農地で発電された電力は、日本の法律で電力会社が20年間、一定価格で買い取ることが義務付けられていることから、固定買取価格での安定した収益性が期待できる。
 このため、この農地のオーナーも「発電しながら、従来どおりに稲作ができることが最大のメリット。これまでにない売電収入も見込め、文字どおりに天からの恵み」と話している。

実証中の売電額を知らせる掲示板

 近接地には同規模の第2実証実験地もあり、近く実証実験を開始する予定だ。今後、農耕機械の作業性調査を始め、来春の田植え時や8月の稲刈り時にはそれぞれ田植え作業、稲刈り作業の生産性調査を実施する。また、ソーラーシェアリング下での稲作生産量と、ソーラーシェアリング圃場以外での稲作生産量を比較検討し、その有効性を検証する。
 さらに、農家から依頼されている稲作農地におけるソーラーシェアリングの事業計画支援も積極展開していく。現在のところ、来春には阿南市で3カ所(総面積約3000坪)、再来年には少なくとも6カ所(約6000坪)で、稲作農地ソーラーシェアリングが動き出すことになっている。
 西野社長は、「ソーラー発電による電力は、災害などによる停電時の非常用電力にもなり、二酸化炭素を排出しないクリーンエネルギーで地球温暖化防止にも貢献する。さらに、収益性が見込めれば、若者の農業回帰を促し、後継者不足や少子高齢化の解消、ひいては地方の活性化へと、地域が抱える問題を解決する可能性を秘めている」と展望している。

西野社長

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