【防災通じ社会貢献!】土木系学科への志願者増加 新潟大学 | 建設通信新聞Digital

4月25日 木曜日

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【防災通じ社会貢献!】土木系学科への志願者増加 新潟大学

 多発・激甚化する自然災害を受け、若者の中でも防災・減災に対する関心が高まっている。新潟大学では近年、土木系学科への入学希望者が増加。土木技術を活用した有事の社会貢献が背景にあるという。一方、習得した専門知識の早期還元を望む学生にとって、緊縮傾向の公共投資予算に伴う事業速度の低迷と実務の場の減少、受け皿(就職先)の組織体制などに現実と目標とのかい離を感じるようで、土木分野以外への心変わりも少なくない。公共事業に携わる行政機関、建設産業の使命である「災害対応」から差し込み始めた光明を、担い手の確保・育成にどうやってつなげていくかが今後の焦点となっている。
 新潟大災害・復興科学研究所の安田浩保准教授によると、「以前は5人程度だった、工学部工学科社会基盤工学プログラム(土木工学)の推薦入試の志願者がここ数年で増加し、2018年度は14人と非常に多かった」と説明する。
 その大半は東日本大震災や西日本豪雨などを踏まえ、土木工学に基づく防災・減災の研究を目的としており、「受験生である高校生が国民生活の利便性と安全性の向上に直結する社会資本の意義をしっかりと理解した上で、社会貢献したいという明確な意志を持っていることに驚いた。また、そういった生徒が一定数いることに(公共事業に対する)風向きの変化を感じている」との認識を示す。
 その裏付けとして、過去の入学者の一部の事例を紹介。その学生は医学部と工学部で進学を迷い、「1つの(土木)技術で多くの人命を救えることを重視し、最終的に工学部を選んだ」とし、土木の魅力が確実に次世代に伝わっていると強調する。
 ただ、在学中は卒業後の就職先となる実社会に触れる機会が多く、予算減少による公共事業の進捗低下、官民に共通する組織内の意思決定の複雑さなどの現状を目の当たりにし、「学生は土木に期待して入学したが、この事業速度では(人命保護という)目標を達成できないと感じてしまう」ことも多い。特に優秀な学生ほど社会貢献への思いが強く「自らの知識を生かすため、それが反映されやすい他の分野を模索する」傾向にあるという。
 裏を返せば、積極的な予算配分、組織体制の見直しなどによる「体質改善が本当の意味での土木業界の復活につながっていく」と考える。さらに「多発・大型化する地震、水害などをみると、既存の社会資本が不十分なことは明白。地方創生に唯一寄与することを勘案しても、公共投資の拡大は不可欠」と力を込める。
 また、インターネットを駆使して情報を収集する入学希望者(高校生)、AI(人工知能)を始めとする先端技術を活用した卒業研究に取り組む学生の姿から「若い世代は感性と共鳴するもの、社会貢献を実感できるものには時間を忘れて没頭する」ため、戦略的な広報による魅力の発信も引き続き重要と訴える。
 奇しくも自然災害を通じて、土木の魅力が若者に再認識されつつある中、他産業への流出を防ぐ上でもその志を受け入れ、目標が実現できる土木業界づくりが急務となっている。

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