【建築文化保存協】街は記憶でできている 槻橋修氏が「失われた街」プロジェクトを語る | 建設通信新聞Digital

5月1日 水曜日

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【建築文化保存協】街は記憶でできている 槻橋修氏が「失われた街」プロジェクトを語る

模型で復元された仙台市荒浜地区の集落

 日本建築文化保存協会は8日、建築家で神戸大大学院准教授の槻橋修氏を招き、東京都品川区の寺田倉庫本社ビルで建築模型の価値と可能性を探る連続講演会の第9回を開いた。槻橋氏は東日本大震災の被災地復興支援として考案し、数多くの建築家や全国の建築学生が参加していまも活動を継続している「失われた街」模型復元プロジェクトを通して、建築が担い果たしていく役割やその意義を語った。
 「模型が街の記憶を再生する」をメインテーマとした講演では、2003年から6年半を東北工大建築学科講師として過ごした仙台・東北とのかかわりとともに、同復元プロジェクトを立ち上げた経緯を紹介。「建築だからこそできること、建築を学ぶ学生が参加できることを考えた」という、この活動では「設計課題で日常的に作っている模型制作のスキル」を生かし、津波被害を受けた街・集落のうち、これまでに450に及ぶ地域を縮尺500分の1のジオラマ模型で復元してきた。

槻橋氏

 現地の住民とのワークショップでは街の記憶を学生たちが聞き取りながら「記憶の旗」を模型に差していく。書ききれない思いは「つぶやきシート」としてアーカイブしていく。再現するのは「日々の暮らし」そのものだ。「人はさまざまな体験を繰り返すことでその土地に対する愛着を深めていく」のであり、ワークショップに参加した学生たちは「1週間でその土地に営まれてきた暮らしを深く知ることになる。それは地域と学生との距離を一気に縮め、その関係をより密接なものにしていく」という。
 「街は記憶でできている。人々は模型を通して自分の中にあるふるさとの風景を見いだす」とし、「決して失われることのない記憶をたどりながら、その土地の空気感までを質的な空間として再現し共有していく。模型とは言い切れない本物性がそこにはある。それをうまく次世代につないでいければ」との思いを吐露した。

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