【現場最前線】近代化産業遺産のレンガ上屋を曳家で15m移動! 外観そのままに再利用 | 建設通信新聞Digital

5月5日 日曜日

公式ブログ

【現場最前線】近代化産業遺産のレンガ上屋を曳家で15m移動! 外観そのままに再利用

確認作業やコロ棒の調整などを行いながら、レンガ上屋を慎重に移動


 鴻池組は10日、同社JVが京都市東山区で施工している蹴上浄水場第1高区配水池改良工事の現場内で、曳家工事の様子を公開した=写真。熟練の職人が確認作業やコロ棒の調整などを行いながら、レンガ上屋をゆっくり慎重に押していった。9、10日の2日間で15mを移動させる作業を予定どおりに終了させた。
 改良工事は京都市上下水道局が発注し、設計を同局、施工を鴻池組・今井組・城産組JVが担当している。2013年12月に着工し、工期は6月末まで。現在の進捗率は約95%で、無事故・無災害を継続している。
 蹴上浄水場(東山区粟田口華頂町3)は日本最初の急速ろ過式浄水場で、第1高区配水池は「近代化産業遺産」に認定されている。このため、改良工事では建物外観を変えないように配水池を改築更新することが求められ、レンガ上屋の流入弁室と流出弁室を再利用できるよう曳家工法を採用した。
 工事は、(1)流入弁室と流出弁室のレンガ上屋を配水池から切り離す(2)切り離した2つの上屋を曳家工法で移動させる(3)配水池内部の工事を行うとともに、流入弁室と流出弁室があった場所に新しい両室をつくる(両室内のバルブや管を更新)(4)移動・仮置きしている上屋を曳家で元の場所に戻し、新しい流入・流出弁室の上に乗せて定着化させる--という流れで進めており、10日に実施したのは元の場所に戻す作業となる。
 すでに流出弁室上屋の曳家は2月に終えており、今月は重さ約600tの流入弁室上屋を移動させる。9、10日で東側に15m移動させた後、23日には南側に2m動かすとともに、地盤の高さ調整のため上屋を切り離した時点でかさ上げしてあった地盤のかさ下げを行う。4月1日には上屋の基礎を新流入弁室に定着させるコンクリートを打設する予定だ。
 10日の作業では、1スパン60cmのジャッキを4基を使い、この伸び縮みを繰り返しながら平均で1時間当たり1m程度のスピードで移動させた。
 北村徹二所長は「延べ労働時間は約16万時間に達しているが、事前の計画づくりや打ち合わせなど作業員間でコミュニケーションを取ることを意識してきたこともあり、無事故・無災害を継続できている。工事は最終段階だが、最後まで気を緩めずにやっていきたい」と語る。

建設通信新聞の見本紙をご希望の方はこちら