【JFEシビル】「音響トモグラフィ地盤探査」で地下断面を正確に可視化 高速解析、無線化を実現 | 建設通信新聞Digital

4月19日 金曜日

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【JFEシビル】「音響トモグラフィ地盤探査」で地下断面を正確に可視化 高速解析、無線化を実現

 JFEシビルが開発した高周波数の音響波を使って地下を見える化する「音響トモグラフィ地盤探査」の改良が着実に進んでいる。特殊な連続波の特性を生かして地下断面をカメラで撮影したように可視化できる技術で、支持層や地中障害物、空洞、岩盤の亀裂、地盤改良の範囲などを高精度に把握できる。現在は年間で15件ほどの適用件数だが、榊原淳一社会基盤事業部音響トモグラフィ部長は技術改良や認知度向上に取り組むことで「定常的に40-50件を手掛けたい」と力を込める。

地中障害物調査の事例

 音響トモグラフィ地盤探査は、ボーリング孔に設置した発振器から周波数と振幅を制御した縦波を発信し、地中に伝播した音波をもう一方のボーリング孔に設置した受信器で受信することで音波の速度と減衰率を取得できる。速度からは地盤の固さや地質構造、減衰率からは空洞や障害物、岩盤中の亀裂などがそれぞれ把握できる。
 取得したデータから速度や減衰率の分布図、3次元イメージを作成することで、地中を正確に可視化できる。榊原部長は「ボーリングは点の情報が得られるが、面的な広がりが掴みにくい。音響トモグラフィ地盤探査はボーリングを補完する位置付けだ」と説明する。
 特徴は高精度で広範囲を調査できる点だ。ダイナマイトの爆発を活用した手法では周波数が低く遠くまで伝播するが、波長が長く精度が低かった。一方、高周波数の波は精度は高いが、減衰が大きく遠くまで伝播しないため、距離の短いボーリング間のみでしか使えなかった。
 音響トモグラフィ地盤探査は、潜水艦のソナー技術に使われている擬似ランダム波と呼ばれる特殊な連続波を使用。高周波数の波でも減衰せず遠くまで伝播する。常に同じ音波を出せるため再現性も高く、基礎構造物の支持層を1m単位の精度で把握が可能となる。ボーリング孔の深さの2倍の距離までは精度を確保して調査できる。

音波の速度と減衰率を取得できる

 1991年の初適用以来、これまで支持層調査や障害物調査、空洞調査など実績は150件以上に上る。さらにフィリピンのマニラ港桟橋延長工事でも支持層の調査に活用されるなど海外での適用事例もある。
 特に近年では水道管の更新が進んでいることから、既設水道管の正確な位置を把握するための地中障害物調査で活用が広がる。擬似ランダム波は街中の騒音よりも周波数が高いため影響を受けにくく、交通を妨げずに調査ができることも強みだ。
 榊原部長が「さらに新しい技術を展開しなければならない」と話すように、より効率的で使いやすくするための改良も進んでいる。新たに簡易的なAI(人工知能)技術を導入。これまで 10日から2週間ほどかかっていた解析時間を1-2日まで短縮した。薬液注入による地盤改良の出来形確認など 早期に調査結果が求められるケースにも対応する。榊原部長は「将来的には調査結果を即時に出力できるようにしたい」と意気込む。
 また計測機器の無線通信も実現した。これまでは計測機器をケーブルで同期する必要があったが、無線化によりケーブル敷設の手間が省け、より効率的な調査につながる。

計測状況

 今後も音響トモグラフィ地盤探査の優位性に磨きを掛けつつ、営業と技術の両面でJFEグループ内での連携強化に取り組む。榊原部長は「当社でやっていない工事ができるグループ会社と共同で仕事をし、パッケージとして調査と工事を請けることもできる。グループの技術を集めればさまざまな課題も解決できる」と前を見つめる。

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