【建築学会】かけがえのない建築遺産「葛西臨海水族園」の保存・活用を! 持続可能な発展を切望 | 建設通信新聞Digital

4月26日 金曜日

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【建築学会】かけがえのない建築遺産「葛西臨海水族園」の保存・活用を! 持続可能な発展を切望

 日本建築学会(古谷誠章会長)は、東京都の小池百合子知事と西倉鉄也建設局長に対し、新たな水族館の実現に向けた検討が進められている「葛西臨海水族園」(江戸川区)の既存施設の保存活用に関する要望書を提出した。適切な整備・改修計画の検討を求めるとともに、保存活用に関して、学術的観点から相談を受けるとしている。
 葛西臨海水族園は上野動物園100周年を記念して都が計画し、日本を代表する建築家の1人である谷口吉生氏の設計で1989年に竣工。展示のための機能性と洗練された意匠を兼ね備えた優れた建築として、毎日芸術賞やBCS賞、公共建築賞などを受賞している。

3階のエントランスの広場から ガラスドームと東京湾を望む

 特に建築へ向かうアプローチの構成や、入念に計画された建築と周辺環境との結びつき、そこで試みられた非日常的な空間の演出は、唯一無二の価値を持つ。また、文化庁が実施している近現代建築を対象とする文化財調査で示された7つの評価基準のうち、「革新性」「地域性」「継続性」の3項目に該当し、都を代表する近現代建築となっている。
 また、マグロが回遊する巨大水槽を始め、画期的な展示方法は、従来の水族館の枠に収まらない新しい「水族園」を創出。その後の日本の水族館の建築に影響を与え、開園から多くの入園者を集めるなど広く市民に親しまれている。
 要望書では、建設後30年近くが経過し施設・設備の老朽化が進み、バリアフリーなどの新たな問題や施設の増改築の要望に対し、長期的な整備計画の必要性を認めつつ、竣工から30年に満たない優れた建築物を建て替えの可能性を含む検討の対象とすることが、「持続可能な発展を目指す今日の社会が求める姿勢とは相容れないもの」と指摘。「多くの市民の記憶が蓄積し、いまなお利用者に評価されているかけがえのない建築遺産を失うことに通じる」と危惧(きぐ)を示している。

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