【記者座談会】時間外労働"上限適用除外"の建設業はどうなる/コンセッション事業に弾み | 建設通信新聞Digital

5月7日 火曜日

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【記者座談会】時間外労働“上限適用除外”の建設業はどうなる/コンセッション事業に弾み

残業上限は「月100時間未満」で決着。17日の働き方改革実現会議に政労使の残業上限規制案提示。写真は2月22日の働き方改革実現会議で発言する安倍首相


A 働き方改革で焦点となっていた時間外労働の上限が13日に決着したが。
B 経団連の榊原定征会長と、連合の神津里季生会長が時間外労働の上限などに関する労使合意を安倍晋三首相に報告した。繁忙期に例外として認める単月の上限規制については、「100時間」をめぐる労使の調整が難航し、労使合意でも「100時間を基準値とする」との表現にとどまっていたが、首相が「100時間未満」とするよう要請したことで事実上、決着した。
C 労使合意では、罰則付きの時間外労働の上限規制導入について、「労働基準法70年の歴史の中で特筆すべき大改革に合意した」との文章も盛り込まれている。労使双方の改革へ向けた決意の固さが読み取れる。政府は17日に開く働き方改革実現会議で、政・労・使の残業上限規制案を提示する見通しだ。
A 上限規制を盛り込んだ労働基準法改正案は年内にも国会に提出して、2019年度の規制導入開始が見込まれている。いよいよ、法的規制による長時間労働の是正が具体化することになるが、上限規制の適用除外となっている建設業の扱いは。
C 2月の実現会議で示された事務局案では「実態を踏まえて対応のあり方を検討する」となっている。3日に開かれた石井啓一国土交通相と日本建設業連合会など4団体との意見交換会で、国交相が「見直しをしたほうが将来の建設業にとってもプラス」との考えを示した。日建連は上限規制に賛同した上で、20年東京五輪後に週休2日制の普及度合いに合わせた段階的な実施を要請している。政府内でも適用除外の維持や猶予期間を設けた上での導入など、さまざまな意見が出ているようだ。
B いずれにしても、長時間労働に依存した企業文化は大きな転換期にさしかかっている。建設業への上限規制導入には災害発生時の緊急対応などの検討課題も残されているが、働き方改革は魅力ある産業へと大きく飛躍する絶好の機会でもある。

コンセッション事業の「二重適用問題」 政府としての対応方針決まる

A 話は変わるが、自治体でPFI事業の柱であるコンセッション(運営権付与)事業適用の阻害要因として指摘されてきた「コンセッションと指定管理者制度の二重適用問題」が解消されるようだけど。
D 内閣府や総務省など関係府省の調整が続いていたが、政府としての対応方針が決まった。ポイントは2点ある。1つは現行法上でも、コンセッション事業者が指定管理者制度の指定を受けずに特定の第三者に対して施設を使わせることができると整理したことだ。具体的には、対象の施設を普通財産化した上でコンセッション事業者に貸し付けることと、施設目的の範囲外使用に限るが行政財産をコンセッション事業者に貸し付けることの2方式がある。もう1つは、コンセッション事業者への施設利用許可権限の付与に向けたスケジュールを明確にしたことだ。
E 今国会に提出した国家戦略特別区域法・構造改革特別区域法改正案の付則には、コンセッション事業者に対する施設利用許可権限を付与できるよう、同法施行後1年以内をめどに具体的方策を検討し、検討結果に基づき必要な措置を講じる、との「検討規定」が盛り込まれた。さらに、検討結果を踏まえ、18年の通常国会に提出予定のPFI法改正案に必要な措置を盛り込む方針も打ち出した。
A この政府方針が実現すれば、二重適用問題が解消され、文教施設などのコンセッション事業の具体化に弾みがつくいえる。ただ、自治体のコンセッション事業導入には、地方議会の承認など、多くの関係者の理解を得るというハードルは残る。

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