【日本設計】東京港区・新国立美術館で「シンク++セミナー」 "科学の伝道師"招いて講演会を開催 | 建設通信新聞Digital

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【日本設計】東京港区・新国立美術館で「シンク++セミナー」 “科学の伝道師”招いて講演会を開催

 日本設計は22日、東京都港区の新国立美術館でシンク++セミナーを開いた。創立50周年として2017年度に始めた同セミナーは、春が“技術”、秋は“自然”をテーマに各界の第一人者を招いて講演会を開催している。5回目となる今回は、京大で人気ナンバーワンの鎌田浩毅教授が、「大地変動の時代の震災リスクと街づくり―南海トラフ地震に備える」と題して、“西日本大震災”への備えや向き合い方などをレクチャーした。

来野氏(左)と対談する鎌田教授

 鎌田氏は、東大理学部地学科卒後、1979年通商産業省(現経済産業省)入省。97年から京大教授に。専門の地球科学や火山学に加えて、“科学の伝道師”として熱のこもった科学コミュニケーションを展開している。当初は講義を重ねるごとに学生の出席率が低下していったというが、その状況を改善。派手なファッション、映像や質問時間など90分の講義を15分ごとに区切ることで、緊張感を継続させるなど、学生を惹きつけるための工夫を語った。
 鎌田氏は、海溝とトラフそれぞれの海域で起きる地震、陸上の直下型地震のメカニズムや想定される被害などを解説した上で、「3・11以降、火山活動が活発化している。富士山が噴火した場合は、ライフラインに加えて、飛行機や高速道路などの交通網が止まることで、経済社会全般にとてつもない影響を及ぼす」と指摘した。
 また、東海地震と東南海地震、南海地震に加えて、日向灘を加えた4連動の巨大地震災害を「西日本大震災」と呼称。プレートの沈み込みなどから「2035年の前後5年ほどに起きるのではないか」と予測した上で、西日本をほぼ覆う規模の被害想定額は東日本大震災の10倍に当たる200兆円となり、GDP比で3、4割ほどを占めることから、「日本がつぶれる可能性もある」とした。
 東日本大震災の教訓を踏まえて各地で地震や津波対策が進む中、高知県沖では高さ34mの津波が地震発生から2、3分後に到達することが予測されており、「逃げる時間がない中で、どのように対応するかがこれからの課題だ」と、これまで以上に防災力を高める必要性を訴えつつ、「20年後に向けて一人ひとりが迎え撃つことが使命だ」と力説した。
 医療施設設計部チーフアーキテクトの来野炎氏との対談では、鎌田教授が「専門性が高いからこそ集団で仕事をする際には、リーダーの伝える技術が重要だ」と強調。病院やマンションの防災対策のあり方など、縦横無尽に話題を展開した。

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