【清水建設】岩手県の簗川ダム建設で「ダムコンクリ自動打設システム」初適用 大幅な生産性向上へ | 建設通信新聞Digital

4月27日 土曜日

公式ブログ

【清水建設】岩手県の簗川ダム建設で「ダムコンクリ自動打設システム」初適用 大幅な生産性向上へ

 清水建設は、盛岡市で建設を進めている簗川(やながわ)ダム(発注者=岩手県盛岡広域振興局)に、コンクリート打設作業の生産性向上を目的として自社開発した「ダムコンクリート自動打設システム」を初適用している。バッチャープラント(コンクリート製造設備)への材料供給から軌索式ケーブルクレーンによるコンクリート運搬・打設までの一連の作業を完全自動化したもので、2018年4月のシステム実装後、同年9月に試験適用を開始。冬季の休止期間を経て、ことし4月から本格適用を開始し、打設作業のサイクルタイムを約10%短縮する効果をもたらしている。 簗川ダムは、盛岡地区東部の洪水・渇水被害の防止を目的に計画され、一級河川北上川水系の簗川の中流に位置する。規模は堤高77.2m、堤頂長249m、堤体積23万m3、総貯水容量1910万m3。型式は重力式コンクリートダム。工期は14年12月から21年3月末まで。施工は清水建設・鴻池組・平野組JVが担当している。

施工は清水建設・鴻池組・平野組JVが担当 21年3月末の完成を目指し作業は進む

 堤体コンクリートの総打設量は23万m3で、打設工事は17年4月に着手した。現在までの打設量は22万1000m3、進捗率は95%に達している。このうち3万m3の打設にシステムを導入している。
 ダム堤体のコンクリート打設工事はコンクリートの製造、運搬、打設の繰り返し作業であり、総工費の約6割を占める。繰り返し作業が自動化すれば、大幅な生産性向上につながるため、同社は一連の作業の自動化に取り組み、システムを開発した。
 システムの流れは、施工管理者がコンクリートバケット(鋼製容器)の運搬先となる打設位置の三次元座標、投入するコンクリートの配合種別などのデータを入力する。施工管理者が作業開始を指示すると、バッチャープラントが稼働し、コンクリート配合種別に応じた骨材、セメント、水などの材料計量、練り混ぜ、トランスファーカー(運搬台車)への積載を自動的に行う。
 続いて、トランスファーカーがバケット位置まで移動し、コンクリートをバケットに積み替える。最後に軌索式ケーブルクレーンがバケットを打設位置まで運び、コンクリートを投下する。これら一連の作業を全自動で連続的に実行する。バッチャープラントへの材料供給もシステムが自動管理し、プラント内の骨材量が不足すると、骨材貯蔵設備から自動供給される。バケットの容量は5m3。軌索式ケーブルクレーンは、多い時で1日当たり200往復し、約1000m3のコンクリートを打設する。1往復にかかる時間は3分20秒。5人のオペレーターが交代で作業に当たっている。
 システムには、自動打設の進捗を一目で確認できる総合管理画面も導入している。画面にはバッチャープラント、軌索式ケーブルクレーンなどの各設備から出力される動作信号を基に、リアルタイムの打設状況がビジュアル表示される。

自動打設の進捗を一目で 確認できる総合管理画面

 堤体コンクリートの打設工事は当初、17年4月から19年11月までを予定していたが、昼夜の連続打設、施工の合理化を進めたことなどにより、打設工期を4カ月短縮し、ことし7月には完了する見込みだ。毎年12月1日から3月31日の間は積雪・寒冷期のためコンクリート打設を休止しており、実働20カ月での完了となる。
 また、システムは日本建設機械施工協会が主催する19年度日本建設機械施工大賞・大賞部門で最優秀賞を受賞した。
 同社は、今回のシステムを今後のダム建設現場に適用していく方針。森日出夫所長はシステムについて「ICTを活用した技術を簗川ダムでは多く使っている。その集大成として本社の土木技術本部ダム統括部と共同で取り組んだ。次の現場に有効に使えるものが完成したと思っている」と手応えを口にする。

森所長

建設通信新聞の見本紙をご希望の方はこちら