【記者座談会】「2018年7月豪雨」から1年 | 建設通信新聞Digital

5月6日 月曜日

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【記者座談会】「2018年7月豪雨」から1年

A 昨年7月の西日本豪雨から1年がたつ。被災地の現状は。
B ことし1月に国土交通省中国地方整備局が中心となって発注9機関と49の業界団体で構成する「中国地方復旧等円滑化官民ネットワーク会議」を発足し、円滑な復旧・復興に向け連携、情報共有を密にしている。この半年で業界からは労務・資材の調達、発注機関からは工事発注計画や工期設定などで成果があったことなどが報告されている。砂防工事では、直轄砂防の緊急工事はすべて契約済みだ。
C 6日には広島県内の各被災地で追悼行事が行われ、追悼式に出席した湯崎英彦知事は「被災者一人ひとりに寄り添った支援やインフラなどの復興に全力で取り組む」と決意を新たにした。多くの犠牲者を出した坂町の吉田隆行町長が、毎年、地震や津波、土砂災害などを想定した避難訓練を実施していた中で「いざ本当に災害が起こった時、その効果がなかったのではないかと自問自答している」と吐露した言葉が印象的だった。
A 教訓を今後にどう生かすかが問われるわけだが、ことしも7月に豪雨災害が九州地方を襲った。現場の状況はどうだろう。
D 警戒レベル4にあたる避難指示が鹿児島、宮崎の両県内で相次いで発令され、熊本県を含む避難対象者は196万人に膨らんだ。特に被害が大きかった鹿児島県内では、9日現在、2人が死亡、住宅被害は354件、公共土木施設被害は県工事383件、市町村工事208件に及んでいる。2017年の九州北部豪雨、18年の西日本豪雨に続き、九州では3年連続の大規模水害となったわけだが、これまでの教訓を生かそうと、九州地方整備局では人員や装備品を増強したほか、被災個所の情報共有を図る360度カメラを導入するなどした。今後、これらの効果についても総括があるだろう。

毎年のように豪雨災害に見舞われる中で事前の対策とともに迅速な復旧に向けた対応が従前以上に求められている。写真は昨年7月の西日本豪雨災害で建設コンサルタンツ協会が実施した本部・中国支部合同現地調査による広島県坂町小屋浦地区天地川堰堤被災地の状況確認

早期復旧・復興へ改正品確法が後ろ盾

E 国交省もこれまでの災害の教訓を踏まえ、ことしの災害対応に当たっている。九州地方南部の大雨に伴う災害復旧事業では、迅速な復旧・復興を目的とする入札・契約の取り扱いなどに関連する要請を各地方整備局と各都道府県、政令市に行ったが、この中では6月14日に公布・施行された改正品確法で新たに盛り込まれた災害時の緊急対応強化に関する規定について言及している。
A その意義は。
F これまでも災害復旧・復興における随意契約、指名競争入札などの適用の考え方や手続きに当たっては、その留意点、工夫をまとめた『災害復旧における入札契約方式の適用ガイドライン』の活用などで対応を呼び掛けてきた。今回の法改正により、そうした適用・手続きの根拠が法律に明記されたことになる。直轄工事でももちろんだが、自治体工事において、緊急性に応じた適切な入札・契約方式を選択する際の後ろ盾ができたことで、早期復旧・復興のための手段を積極的にとることができるようになっている。
E 改正品確法(公共工事品質確保促進法)では調査、測量、設計などを同法の対象として定義付けた。災害復旧は初動から迅速性が求められることから、測量、調査、設計を行う建設コンサルタントなどの貢献が不可欠だ。サービス業に分類されるこれらの業種が大規模災害発生時に、超過勤務規制に抵触せず、業務を行えるよう規定していることも大きな意味を持つ。
A いずれにしても、豪雨などをはじめとする災害の激甚化・頻発化は明らかだ。建設業の出番がさらに増えることも予想されるだけに、受発注者一体となって、より柔軟な対応を進めていく必要があるだろう。

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