【国交省】交通結節拠点化「バスタプロジェクト」全国展開へ 官民連携で高速バス乗降場を集約 | 建設通信新聞Digital

4月21日 日曜日

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【国交省】交通結節拠点化「バスタプロジェクト」全国展開へ 官民連携で高速バス乗降場を集約

 国土交通省は、官民連携で整備した新宿南口バスターミナル(バスタ新宿)をモデルに、駅周辺に点在する高速バスやタクシーの乗降場などを集約し、交通結節拠点化する「バスタプロジェクト」の全国展開を目指している。ただ、バスタ新宿で構築した事業スキームには課題があると認識しており、各地で効率的に整備・運営できるように事業スキームの見直しを検討している。高速バスの需要が高まり、自動運転車など新たなモビリティー(移動性)も誕生しようとする中、まちづくりに合わせて公共交通ターミナルの設置を検討する動きが広がりつつある。

公共交通ターミナルのモデルとなった「バスタ新宿」

 バスタ新宿は、新宿駅周辺19カ所に点在していた高速バス乗降場を集約した日本最大のバスターミナルで、2016年4月にオープンした。高速バス運行会社117社が乗り入れ、発着便数は1日平均1494便、利用者は1日平均約2万9000人に上る。タクシーの乗降場を備えるほか、鉄道駅とも直結する交通結節拠点となっている。
 1989年に年間4400万人だった高速バス輸送人員は、27年後の16年には1億1600万人に増えた。また、東日本大震災で運休した東北新幹線の代替輸送機関として活躍するなど、高速バスの重要性が近年高まっていることから、国交省はバスタプロジェクトによって各地に高速バスの拠点を整備する方針を打ち出した。
 だが、バスタ新宿の事業スキームを他の公共交通ターミナル整備に適用するには課題があると見ている。バスタ新宿は「道路付属物の一般交通の用に供する自動車駐車場」として整備されており、バスやタクシー専用のターミナルとして法的な位置付けがされていない。そのため、道路管理者からの要請で一般車両に利用を控えてもらっている状況で、「どうしても入りたいと言われたら断り切れない」(国交省道路局)という制度的な課題を抱える。
 道路管理者と運営会社は兼用工作物管理協定を結んでいるが、運営会社はバスタ新宿のプロジェクトに伴って日本バス協会などが設立した民間企業で、いわば「決め打ち」(同)で選定した格好。全国展開するには、官民連携の民間事業者選定で一層の透明性を図る必要がある。加えて、商業施設からの収益を維持管理費に充てる仕組みがなく、道路区域内の占用許可を出している商業施設から「公共貢献」として維持管理費の一部を負担してもらっている状況だ。
 こうした課題解決を目的とする事業スキーム見直しの方向性として、国交省はバスやタクシーの専用ターミナルとして道路法で位置付けを明確化するとともに、商業施設から得られる収益を最大限活用できる仕組みの導入を打ち出した。また、兼用工作物の管理協定ではなく、PFIなどの官民連携手法を採用できるようにする考え。
 第2のバスタ計画は既に動き出している。関東地方整備局が品川駅の西口で民間の開発計画と連携し、高速バスやタクシーなどの交通ターミナルを設けるとともに、PPP/PFI事業で自動運転など最先端のモビリティーの乗降場を備えた次世代型交通ターミナルを整備する事業を19年度に事業化した。リニア中央新幹線開業に合わせ、27年に一部を供用開始する。

関東整備局の事業で第2のバスタ計画が始まった

 関西でも検討が進む。国交省と神戸市は18年8月、国道2号等神戸三宮駅前空間の整備方針を公表した。三ノ宮駅と神戸三宮駅の周辺の再整備に合わせ、駅周辺の6カ所に点在する高速バスの乗降場を集約して高速バスターミナルを設置する構想だ。
 そのほか、札幌駅、仙台駅、新潟駅、呉駅、大宮駅、長崎駅でも地域による公共交通ターミナル整備の検討が行われている。国交省は、事業スキームを見直すとともに、直轄の道路事務所が地域と一緒に検討を進め、全国でバスタプロジェクトを実現させる方向で動いている。

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