【高速道路工事を守る】危険伝える安全ヘルメット NEXCO西日本メンテナンス関西が開発協力 | 建設通信新聞Digital

5月5日 日曜日

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【高速道路工事を守る】危険伝える安全ヘルメット NEXCO西日本メンテナンス関西が開発協力

 高速道路上での工事は交通規制しながら進めることが多く、事故が相次ぐ中で、西日本高速道路メンテナンス関西が開発に協力した振動によって作業員に避難を促すヘルメット『K・HO-MET(ケイホーメット)』が注目を集めている。同社の中森康裕保全事業本部修繕工事部長兼保全事業本部技術開発部長は「事故は漫然運転が原因で、車両を止める術はなく、少しでも避難のチャンスをつくることが重要」とし、ケイホーメットの有効性を訴える。

ケイホーメットと連携する周辺機器

矢印板や危険察知システムなどと連携

 高速道路上の、作業で作業員の責任ではなく発生した事故は2015年から17年にかけて死亡事故も含め484件発生した。事故発生地点は矢印板が設置されているテーパー部の54%が最も多い。
 交通規制を伴う高速道路上の工事現場では、これまで監視員による警笛や大音量スピーカー、フラッシュライトなどで作業員に危険を伝えていた。しかし、多くの車両が通行する中、工事の騒音も相まって作業員には危険が伝わらないことが課題だった。
 15年9月には中国自動車道で事故対応中の作業員に車両が衝突する2次災害も発生した。西宮名塩SAでも清掃員がバスに轢かれる事故も発生している。中森部長は「少しでも逃げるチャンスがあれば結果は変わっていたかもしれない」と語る。

◆視覚と聴覚では危険伝わらず
 作業に集中していると視野が狭くなり、音も聞こえにくくなる。規制区間内での事故から作業員を守るためには速やかな事故の検知と素早く正確に作業員に伝えること、そして作業員の速やかな避難が重要だとされている。
 音による伝達の場合、工事騒音や交通騒音、距離減衰、そして作業員が耳栓をしながら作業していることで確実に情報が伝わらず、事故につながってしまう。だからといって音量を上げすぎると健康被害が発生する。フラッシュライトなどの光も日中の明るい状況や姿勢、距離により伝わらないことも多い。

事故現場には危険も伴う


◆さまざまな現場の環境にも適応
 同社が新たに開発したケイホーメットは、異変に気づいた警備員などが手動ボタンを押すか周辺機器と連携し、自動伝達することによりヘルメットが振動する。ヘルメットが直接振動するので作業員に確実に異変を知らせることができる。
 乾電池2本で15時間稼働し、最大64台までペアリング可能。距離や気象条件に左右されず、防塵・防水性、耐衝撃にも優れており、ハンドブレーカーを使用した振動環境下でもヘルメットの振動と区別が付くなど現場での厳しい環境もクリアした。
 NEXCO総研はケイホーメットと外部スピーカー、音とバイブレーターで知らせるポケット端末の伝達方式による実証実験を行った。工事用ヘルメット(静音状態)と耳栓、バイブロ・コンパクタ音、ジェット型ヘルメット(同)の状況で実験した結果、スピーカーによる注意喚起に対し、耳栓とバイブロ・コンパクタ音の環境下では約6割の作業員が「分からない」と回答。さらに4割は「まったく分からない」と答えた。一方、ケイホーメットではどの環境でも「非常に分かりやすかった」「伝わった」で100%伝達することが分かった。

装着状況(夜間工事)


◆規制区域内の機器と連携
 19年1月の発売から半年以上経ち、600セットを売り上げた。導入した現場では機器の小型化・軽量化の要望があり、同社は消費電力の削減による電池小型化やモーター小型化なども視野に入れている。周辺機器も拡充してほしいとの声を受け、ケイホーメットと連携した周辺機器の導入拡大も目指す。
 10月からは受信機と発信機のみでも販売を始めており、拡充させていく方向だ。さらに「車載式衝撃センサー付き発信機K・HO-IMPACT(ケイホーインパクト)」のほか、転倒・衝突センサー付きのラバコーンと矢印板を年内に、また「危険走行検知システム」を搭載した標識車も19年度内に導入する見通し。

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