先導する関西の建設ICT/BIM CIM新時代へ | 建設通信新聞Digital

4月19日 金曜日

B・C・I 未来図

先導する関西の建設ICT/BIM CIM新時代へ

 ICTを活用した建設生産の先導的な取り組みが、関西地区に点在している。3次元モデルデータで生産プロセスをつなぐゼネコンのフルBIMプロジェクトが相次ぎ、維持管理段階を見据えたBIM・FM連携に取り組む自治体も出てきた。国土交通省がけん引する形で、土木現場の3次元活用も活発化する。従来の仕組みから脱皮し、新たな枠組み構築を目指す建設業のICT活用の姿がそこある。関西発の建築ICT最前線を追った。

 “BIM元年”から10年の節目となる2019年。土木分野では国土交通省が2025年度のBIM/CIM原則化を表明し、建築分野では官民一体の建築BIM推進会議が発足したように、建設生産の3次元データ活用に向けた取り組みが新たなステージに入ろうとしている。建設業のICT活用の動きは全国に広がるが、実プロジェクトを眺めると、新たな時代の扉を開こうとする先導的な動きが、関西地区に見え隠れする。

 BIM導入にいち早く舵を切った大手ゼネコンでは、大阪市内に先導プロジェクトが相次いでいる。大林組は「大阪みなと中央病院」でプロジェクト関係者が1つのモデルから情報を出し入れするワンモデルBIMに取り組み、清水建設は「からくさホテルグランデ新大阪タワー」で先行導入したロボット施工を全国に水平展開する。

 「オービック御堂筋ビル新築工事」で本格的なフルBIMに挑む鹿島の現場には現在までに社内外から延べ2300人もの見学者が訪れるほどの注目ぶり。現場を指揮する北村浩一郎所長は「BIMの導入で考える意識が広がった」と協力会社も含めた現場関係者の意識変化を実感するとともに、将来的なイメージとして都市のデジタルツイン化も見据える。

将来的なイメージとして都市のデジタルツイン化も見据える「オービック御堂筋ビル新築工事」現場

 ことし発足した建築BIM推進会議の重点テーマとなる建築確認業務のBIM活用でも、日本ERIと竹中工務店が「武庫川女子大学新公江記念館建設工事」で先行的な検証を進めた。建築事業の完全BIM化を目指す大和ハウス工業は奈良市に建設する自社の「(仮)大和ハウスグループ新研修センター」でFMまで含めた一気通貫BIMにチャレンジする。公共施設では京都府八幡市が整備中の新本庁舎でBIM・FM連携に向けたシステム構築に乗り出したように、維持管理BIMの流れも見え始めた。

BIM・FM連携システム構築を目指す京都府八幡市

 土木分野に目を転じれば、国土交通省が2025年度のBIM/CIM原則化に向けた先導役のi-Constructionモデル事務所として全国10事務所を選定した中で、近畿地方整備局内の豊岡河川国道事務所だけが2つのモデル事業に取り組む力の入れよう。インフラ事業会社ではNEXCO西日本もBIM/CIMの試行に乗り出した。

 川上段階の3次元データ活用が強く求められる中で、建設コンサルタンツ協会の近畿支部は全国唯一、BIM/CIMに関連した分科会を発足し、課題整理に着手した。内閣府の官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM)では橋梁上部工の分野で、近畿地方整備局発注の大野油坂道路九頭竜川橋上部工事が採択され、現場では施工自動化の道筋を描こうとしている。

 建築、土木ともに先導する関西の建設ICT最前線にはそれぞれの現場で創意工夫が見られる。受・発注者ともにICT活用を生産性向上の手段として位置付け、業務の無駄を省き、最終的に働き方改革につなげる道筋を描く。下支えするソフトベンダー各社も最新機能を拡充しながら多様化する3次元データ活用のニーズに真正面から向き合っている。

掲載は『建設通信新聞』2019年10月16日