【建築士が果たす役割探る】京都工芸繊維大 文化財保存活用をテーマに特別研究会開催 | 建設通信新聞Digital

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【建築士が果たす役割探る】京都工芸繊維大 文化財保存活用をテーマに特別研究会開催

 京都工芸繊維大学は14日、東京都千代田区の京都アカデミアフォーラムin丸の内で、「文化財の保存活用におけるこれからのArchitect(建築士)の役割を考える」をテーマにした特別研究会を開いた。

 同大は日本での「ヘリテージ・アーキテクト(仮称)」誕生を目指す試みとして、2020年度から社会人に開かれたリカレント教育をスタートさせる。研究会では有効なリカレント教育構築の第1歩として、民間の建築士が歴史的な都市や建築の保存・活用で果たすべき役割などを議論した。

 19年4月に施行された改正文化財保護法では、文化財行政の主要部分が都道府県・市町村に委ねられた。市町村は文化財に関する調査研究、提案を行う文化財保存活用団体を新たに指定できるようになった。
 法改正を受け指定文化財のほか、登録文化財、未指定の歴史的建造物の保存・活用に関する重要な役割が民間の団体、人材にシフトすることが見込まれる中、建築士が果たす役割はますます重要性を増すことになる。

 特別研究会の冒頭、清水重敦同大教授は、「文化財保護法改正などの動きを受け、専門家としての建築士の役割を改めて考え直す必要があると考えている。ヘリテージ・アーキテクト養成講座を通じて社会に議論を提起していきたい」とあいさつした。

 特別研究会の趣旨を説明した田原幸夫同大客員教授(日本イコモス国内委員会理事)は、「欧州では文化財の保存・活用で建築士が活躍できる土壌がある。日本でも近代建築が重要文化財に続々と指定されているが、法的な課題も民間オーナーが駆けずり回って対応しており、そういった点も考えて行く必要がある」と指摘した。
 
 引き続き、矢野和之文化財保存計画協会代表取締役(日本イコモス国内委員会理事・事務局長)が「文化遺産の保存活用をだれが担うのか」をテーマに講演した。矢野氏は文化遺産の保存・活用に求められる職能として、本質的価値を判断・整理する能力(歴史的・文化的知識とセンス)、活用などの潜在的価値を判断し、価値を引き出す計画能力、新たな価値を創造する能力などを挙げた。

 「民間設計者は文化遺産の保存活用にいかに貢献すべきか」と題して講演した伊郷吉信自由建築研究所代表は、地域に密着し、建物所有者に寄り添った「まち場」の取組事例を交えながら、歴史的建築物の保存・活用の苦労や喜びなど現場のリアルな部分を紹介した。
 
 今後の課題として、増加が見込まれるRC造の建物を含め、多様化する登録有形文化財への対応を挙げ、「文化財としての建物の保護と現実的に活用するケースがある。予算の関係、職人がいないなどの課題を乗り越えていく必要がある。活用する場合は現代工法を使ったほうが良い場合もある」と指摘した。

 講演後は、矢野、伊郷、田原氏と笠原一人京都工芸繊維大助教、中山利恵同助教が文化財の保存・活用に建築士が果たすべき役割などについて討論した。

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