【大高建設】「黒部川の防人」として強みを強化、多分野へ注力 SDGs、グローバルな視座で事業創出 | 建設通信新聞Digital

4月26日 金曜日

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【大高建設】「黒部川の防人」として強みを強化、多分野へ注力 SDGs、グローバルな視座で事業創出

 富山県の黒部峡谷のとば口、黒部市宇奈月温泉に本社を置く大高建設は2019年6月、SDGs(持続可能な開発目標)宣言をし、全社挙げてSDGsを軸とした働き方改革と職場環境改善に取り組んでいる。同社3代目として2000年から舵(かじ)を取る大橋聡司社長は、「チャレンジ・ハングリー」の創業精神そのままに就任以降、外食など異分野への進出や地元宇奈月温泉での再生可能エネルギーを生かしたまちづくり、M&A(企業の合併・買収)によるグループの業容拡大、海外進出への着手など、八面六臂(ろっぴ)の事業展開を続けている。今後の成長シナリオを「『黒部川の防人』としての強みをより強く固めつつ、いろんな分野へ注力していく」と描く。その中で事業創出への羅針盤として活用しているのもSDGsだ。

大橋聡司社長

◆ダイバーシティー採用する黒部川の“防人”/今春から現場含め完全週休2日

 企業経営で現在、最重点で取り組んでいるのは、との問いに間髪入れず「人ですね」。「人がやりがいを持って仕事できる場をつくること。言葉でいえば簡単、シンプルだが、それができていれば自ずと人は入ってくる」と揺るぎない。異分野も含めチャレンジングな事業展開の中で学んだことを働き方について具現化したり発信してきたことが近年、新卒採用などで実を結び始めている。今春入社予定の女子大生は、住みやすい富山で働きたいという希望を持ち、自身の震災経験から建設業の重要性もよく分かっていた。何より同社がダイバーシティーを採用していたことが決め手となって、縁もゆかりもない関東の地から同社を訪ね門をたたいたという。
 中国から新潟大大学院に留学し、その後入社して5年目となる女性社員も富山県内でダイバーシティーを採用している企業を探して同社にたどり着いた。いまではSDGsの統括担当だ。ミャンマー出身で入社2年目の女性社員は、再生可能エネルギー関連で同社と交流があった地元大学に留学していたことが縁となり、いまは海外事業のサポート業務を担当している。
 「働き方について当社の基本はダイバーシティー。女性も日本国籍以外の人も平等に存分に活躍できる会社にしていくということ」と強調する。今春から現場も含め完全週休2日(土日休)に移行する予定だ。現場からボトムアップで提案が上がってきたという。「週休2日もICT活用も、やれといわれたからやっているのではなく、われわれが目指す会社作りに必要なツールの1つだから取り組んでいる。ただ、やるからには常にトップランナー。そんな意気込みです」と笑う。

昨年6月にSDGs宣言、全社を挙げて働き方改革と職場環境改善に取り組む

 今後注力したいのは海外展開だ。18年にミャンマーに現地法人を設立した。昨年12月には現地企業と合弁会社2社を立ち上げ、これから同国の公共事業に積極参入していく。さらに同国のエンジニアや技能者などを日本に紹介・支援する登録支援機関にも認められ、ビジネスとして取り組んでいく考えだ。
 1946年に創業した同社は黒部川流域を舞台に電源開発、砂防などの土木工事や建築工事を幅広く手がけてきた。中でも黒部奥山の工事で搬入する重機や資材はトロッコ電車やヘリコプター頼み。「こうした環境下での工事ノウハウはスーパーゼネコンにも負けない当社最大の強み」と胸を張る。同時に、厳しい作業環境だけに「安全最優先」を会社の最高理念に位置づける。

黒薙川砂防工事ではヘリを使って重機を搬入

 SDGsでは「安心・安全なまちづくり」と「働き方改革」を主眼に、環境への配慮や技術革新、ダイバーシティー、安全な労働環境といった目標を設定し達成に向け取り組んでいる。現場単位でも自発的に取り組み始めたという。「SDGsは新しい事業の道しるべにもなるし、工事の進め方にも役立つ。建設業のやりがい、誇りを感じることにもつながる」とその“活用効果”を説明する。
 これまで外に向けた情報発信に消極的だった建設業、中でも地域の中小建設業にとって、自らの社会的立ち位置を国際社会共通の視座と言語でとらえ直し、その検証結果を見える化し、課題解決に向けて取り組んでいくSDGsの取り組みはほとんど未経験だ。しかし、就職先選定で企業の社会への貢献度を重視する傾向が強いといわれる近年の若年者を呼び込むのに、SDGsの活用効果は少なくないともいえ、同社の取り組みはその先行事例、「トップランナー」として未来を提示してくれそうだ。
 
 
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