大高建設(富山県黒部市、大橋聡司社長)は、地域建設業で初めてとみられる自社専用のメタバース(仮想空間)を構築し、次世代型広報・採用活動への転換を目指している。より正確で分かりやすい情報を発信し、空間利用者同士が現実世界に近い形で交流できるという特長を生かし、一方通行ではなく、双方向のコミュニケーションを推進する。企業と業界の理解促進につなげることで、担い手の確保・育成と地域社会の維持を両立する方針だ。
メタバース基盤の「大高メタバースラボ」は、ソーシャルVR(仮想現実)プラットフォームの「VRChat」を活用している。
ラボ内は3層のフロアで構成し、大高建設と黒部ダムとの歴史や砂防工事の現場、社長インタビュー、ICT施工などに関する動画が視聴できる。フリートークスペースや展示オープンスペース、採用情報を含む多目的会場のほか、シューティングゲームが楽しめるプレイルームも設置している。参加方式は招待制となっている。
空間利用者はインターネット上の分身であるアバターを通して、時間・地理的な制約を受けずに気軽に参加できる。このため、運用実務を担当する同社の山本健太郎氏は「アクセスが難しい黒部奥山と建設業の意義、当社の取り組みを知ってもらう機会を提供する、新たなコミュニケーションツールに位置付けている」と説明する。
精度の高い意思疎通と交流が確保され、実際の対面よりも参加調整しやすいため、情報収集の観点で従来よりも受動性が弱まり、能動性が強くなる。「現場見学会や防災教育などでも(同ラボを)活用し、さまざまな世代に対して“伝わる広報”を展開したい」と加える。
AWSの中田大五郎氏が「国内では自社でメタバースを構築する(中小)企業はそう多くない。建設業では前例がないのではないか」と話す、この先進的な取り組みがデジタルネーティブである次世代に波及することを見込んでおり、山本氏は「技術系だけでなく、デジタル人材といった多様な採用につなげたい」という。
情報通信インフラ事業を手掛けるAWS(富山市)と連携して開発した。
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