【本店ビル大規模修繕工事に制度初適用】CCUS普及に弾み/住宅金融支援機構 | 建設通信新聞Digital

4月16日 火曜日

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【本店ビル大規模修繕工事に制度初適用】CCUS普及に弾み/住宅金融支援機構

 住宅金融支援機構(毛利信二理事長)が分離発注し、同機構として初めて建設キャリアアップシステム(CCUS)を活用している「住宅金融支援機構本店ビル第二回大規模修繕工事」で、多くの技能者がCCUSを利用する見込みであることが分かった。4年超の工事期間中に、公共建築のリニューアルにも関わらず、CCUSを利用する技能者は延べ1万6000人に上るものとみられる。これにより多くの技能者の処遇改善を後押しするとともに、同工事を通じてCCUSの普及に弾みが付くことが期待される。

大規模修繕工事が進む本店ビル

 同工事は、1994年に竣工した住宅金融支援機構本店ビル(東京都文京区、SRC造地下2階地上16階建て延べ2万3543㎡)の設備更新や耐震性向上などを目的に実施している。工期は2021年8月25日から25年12月5日まで。
 緊急性の高い防災関係の工事を第1期(21-22年度)とし、第2期(22-24年度)で執務室の更新や分電盤更新など、第3期(23-25年度)で空調の配管工事や外壁補修などを行う。建築工事は安藤ハザマ、機械設備工事は新菱冷熱工業、電気設備工事は東光電気工事が受注した。
 現場で働く技能者は建築工事、機械設備工事が各延べ6000人、電気設備工事が延べ4000人で、合計で延べ1万6000人にも上り、CCUSで就労履歴を蓄積することになる。ただ、CCUSの活用は発注時から計画されていたわけではない。

住宅金融支援機構の吉田輝生総務人事部総務担当部長

 CCUSが技能者の処遇改善に欠かせないものであるため、機構の吉田輝生総務人事部総務担当部長は「契約後に各社にCCUSを活用してもらえないか打診した」と語る。「国や建設業が一体でCCUSを活用し、技能者の公正な評価や工事の品質確保、現場作業の効率化を目指して取り組んでいる中で、独法で政策実施機関である当機構もCCUSの取り組みを支援しようと考えた」と導入した背景を明かす。
 「新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するため、適正で効率的な入館管理も必要となり、そこにもCCUSによる入退場管理が有効だと判断した」と導入メリットを説明する。






◆CCUSの導入打診を受け入れ

 それでは機構からの打診を受けた元請各社はどうだったのか。安藤ハザマの栗本哲夫建設本部建設統括部建設監査部協力会社グループ部長は「リニューアル工事でもCCUSを広げる良いきっかけになった」と振り返る。同社はCCUSの本格運用が始まった19年度当初から対応し、昨年既に一般の土木・建築工事すべてで導入を完了している。導入やカードタッチ数などの目標も定め、CCUSの登録・普及に力を入れてきた。
 ただ、リニューアル工事は技能者数が少ないケースが多く、流動的な対応となることが導入の障壁となっていた。今回の打診を良い機会と捉え、小規模工事への導入にも注力し、「22年度からリニューアルを含めた『CCUSの完全導入』を進めている」という。
 東光電気工事は、元請けとしてCCUSの現場登録の実績はあったものの実績づくりまでには至らず、本格運用は今回が初めてとなった。同社の野口竜弘丸の内支社内線部内線第三課長は「元請けとして対応した現場として、当社のCCUS導入モデルの現場になる」とし、CCUSの展開に弾みが付くとの見解を示す。
 新菱冷熱工業は、これまで元請けとして100件弱の現場でCCUSを運用し、設備工事業の中でも多くの実績を持つ。同社の原田英雄技術統括本部安全衛生推進部労務二課長は「技能者のキャリアを見える化して処遇を改善するため、機構の打診に賛同した」と話す。同社は協力会社のCCUS登録率80%以上を目指しており、72%まで到達していたため、同工事がこれを後押しした。

顔認証でCCUSに就労履歴登録して体温などを確認

◆将来のためにもCCUS不可欠

 各社とも建設業全体に普及するまでにはまだ課題があると考える。元請けが新規入場教育など、さまざまな機会を通じてCCUSを説明しても、その必要性を十分に理解していない技能者がいるからだという。技能者が登録作業を煩雑に感じることも課題だと指摘する。
 このため、技能者に登録・活用するメリットが目に見えるよう丁寧に進めることや適切に登録をサポートすることが必要だという。技能者だけでなく事業者側にも課題はあり、1次下請けの登録が進む中、2次・3次下請けの登録促進も必要だと語る。
 3社共通の認識は、技能者の処遇改善や担い手確保の観点からも「CCUSは不可欠」だということだ。安藤ハザマの栗本部長は「産業全体で普及・活用を進める必要がある」と強調する。
 こうした業界側の意向を踏まえ、機構の吉田部長はCCUSのさらなる普及に期待を示す。企業や技能者だけでなく、発注者にとってもメリットがあるからだ。「CCUS採用は、処遇改善意識の高い企業の支援につながる。施工能力の見える化により、発注者として施工品質に対する安心感も高まる」という。このため、「いずれ公共工事、民間工事を問わずCCUSが活用される状況となり、技能者の処遇を改善し、建設業の発展につながることを願う」とさらなる普及に期待を込める。



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