【記者座談会】新型コロナウイルス感染症の影響続く/東日本大震災から9年 | 建設通信新聞Digital

4月29日 月曜日

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【記者座談会】新型コロナウイルス感染症の影響続く/東日本大震災から9年

A 新型コロナウイルスの感染拡大による影響は、収まる気配がなかなか見えてこない。
B 国土交通省が感染拡大防止を目的に実施した直轄工事・業務での一時中止などの意向確認について、5日時点で工事が約200件(全体約9000件)だった一方で、業務は全体の1割に当たる約1200件の申し出があった。
C しかし、工事で200件も申し出があったのは意外だった。大手・準大手ゼネコンの現場担当者に聞くと、「もちろん、一時中止した経費などは発注者が支払う意思を示しているのは分かっているが、こちらから一時中止してくださいと申し出るのは、ちょっと考えられない」と口をそろえた。3月で工期末の間近な工事が多いほか、工期末でなくても工期達成のためにギリギリの工程で進めている現場も多い。現場では、技能者全員に毎日の検温を義務付けるなどで何とか対応しているようだ。日給月給の技能者が多い中で、2週間も工事が止まると生活ができなくなるという事情もあるだろう。
B 200件の中には、一部で誤解を生む報道があった影響で、発注者からの一時中止命令が出たと勘違いした工事もあるのではないか。
C 本社などの管理系の部門では、学校休校に伴い、制度は存在したが使われていなかったテレワークなどの制度を積極的に試みる機運が高まっている。入社式についても、テレビ会議システムの活用を検討している企業は多い。
D 業務については、技能者の給与のことを考える必要はなく、一時中止の判断をしやすい。3月の履行期限の業務を多く抱える中で、直轄発注の業務だけでも一時中止になれば働き手の負担軽減にもなるという計算が働いたのではないか。

新型コロナウイルスの感染拡大防止へ現場では毎朝の検温を義務付けるなどの対応を取っている

地域を守るため他産業による買収に抵抗

A 11日で東日本大震災から9年を迎えた。
E あれからさまざまなことが変わった。建設投資の増加によって将来的な課題とされていた担い手の確保が現実的な課題となり、建設産業のあらゆる企業が技能者の処遇や職場環境の改善、働き方改革に真剣に取り組み始めた。
F 東日本大震災以降、災害が頻発し、国土強靱化の必要性に対する理解が広まってきたのも、建設業界にとっては大きなことだ。災害時には、地域の建設会社が現場に駆けつけ、復旧に命をかけ、汗を流しているということも少しずつだが、理解が広まっている。
G だが、事業承継などの問題から、その地域の建設会社が建材卸などの流通系企業やメーカーに買収されているという事実もある。災害対応は、ただそこに建設会社があれば良いというものではない。先祖代々、その地域を守ってきた自負とプライドを持って、「おらが街を守る」という意識が薄れていくことが最も怖い。
E そうした危機感を持つ地域の建設会社の中には、逆に地場のコンサルやメーカー、専門工事会社を買う側に回っている企業がいることを忘れてはならない。儲ける手段として建設会社を買おうとする勢力に対して反旗を翻し、強く賢くなってM&A(企業の合併・買収)から地域を守ろうとしているわけだ。地方の建設業界では、その綱引きがいま、静かに行われている。地域を守る存在がいなければ、災害時の復旧もままならないということが、東日本大震災で得た教訓でもあるということだ。
 
 
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