【働きがいのある産業に】全国建設青年会議がオンライン座談会 地域建設業の未来を展望 | 建設通信新聞Digital

5月5日 日曜日

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【働きがいのある産業に】全国建設青年会議がオンライン座談会 地域建設業の未来を展望

 全国建設青年会議が4日からオンデマンド配信している2020年度全国大会(開章夫大会会長)では、プログラムの1つとして北海道、東北、関東、中部、北陸、近畿、中国、四国、九州の9ブロックの代表者による座談会を実施する。労働環境の改善、新しい働き方・生産性向上、担い手確保の3つの視点で地域建設業の将来像などを展望している。

 座談会には、開会長(北陸建設青年会議)のほか、萩原一宏(北海道建青会)、清水隆成(東北建設業青年会)、増子秀典(関東建設青年会議)、山浦正貴(中部建設青年会議)、中川和久(近畿建設青年会議)、池本学(中国地方建設青年交流会)、山崎一志(四国建設青年会議)、高野大介(九州建設青年会議)の8氏が参加した。

 議論の口火を切った、清水氏は「学校、官公庁が土日休みの中で、建設業も『週休2日を実現するんだ』というメッセージを発信し、その達成に努めなければならない」と強調した。

 「(公共工事に比べ)民間が休みづらい」といった意見が中川氏を始め複数聞かれ、市町村を含む行政機関と民間発注者との官民連携や、受発注者双方の意識改革が解決策として指摘された。

 高野氏は、熊本県内で熊本地震に伴う復旧工事が増えている現状に触れ、「復旧作業を通じて、住民の安心・安全を一日も早く取り戻すことを使命とする以上、週休2日の取得が難しい状況にある」と吐露した。

 また、山浦氏は長時間労働是正の観点から「書類の簡素化が必要」と訴えた。

 清水氏は積雪寒冷地特有の除雪作業に言及した。休日取得、長時間労働への対応とともに、「一定の降雪量が毎冬見込める地域では除雪作業が収益の柱となるが、当社が担当する地域のように降雪量にばらつきがあるところも少なくない。地域の建設業として除雪体制を維持せざるを得ないが、今後に不安もある。降雪量にかかわらず、機械のリース料を(発注者に)負担してもらわなければ、担い手はいなくなる」と危惧(きぐ)し、北海道の萩原氏と北陸の開会長も同調した。

 山浦氏は「雪を道路の端、つまり住宅側に寄せると、そこの住民から『玄関の前の雪をどうにかしてほしい』との苦情がくる」ことを明かし、除雪に対する市民の理解と当事者意識の醸成が重要と力を込めた。

 高野氏は、働きがいに関する自社の取り組みを紹介。「子どものイベントを見据えて工程を組み、休みを取る。それも仕事。家庭をないがしろにして、現場にいることは許されない。家庭があるから、会社や現場に来られる。両立できないと心が不安定になって、事故やけがのリスクが高まるので、心身ともに健康な状態で働いてほしい」との考えを示した。

 女性活躍の促進も業界発展に向けて重要との認識で一致している。ある参加者は「給料は男性だろうが、女性だろうが分け隔てない。やりがいを持って働ける環境を整備するのがわれわれの仕事だ」と発言した。

 働き方改革や生産性向上については、コロナ禍で打ち合わせや検査などのオンライン化が浸透しつつあるとし、増子氏は「施策自体は発注者が決定することだが、われわれからも提案していきたい」と話した。

 池本氏らは労務や資材調達、工期短縮の観点からプレキャスト(PCa)化の推進を提示。社会資本の利用者である住民のために「1日でも工期を短くする努力が生産性向上につながる」と口をそろえた。

 開会長は「ICT、オンラインでどこまで対応するかを各社が検討していると思う」とした上で、「仕事の仕方がスマートになれば、若手をひき付ける格好良い建設業になる」と述べた。山崎氏はi-Construction、建設キャリアアップシステムなど「いろいろな施策が矢継ぎ早に展開される。賢い選択をしなければならない」とくぎを刺した。

 担い手の確保・育成では、萩原氏が業界団体が実施したアンケート結果を基に「生徒や学生、その保護者は建設業に対して(以前のような)悪いイメージを抱いていないが、建設業が実施しているPR活動を知らない人が多かった」とし、「建設業のやりがいや楽しさはどこにあるのか。業界に従事するわれわれが伝えていかなければならない」とした。

 開会長は「大学の先生から情報処理系の学科の学生を薦められるが、建設系学科以外の学科は建設業に入職することを想定していない」と、戦略的広報の拡大展開の必要性を強調した。

 高野氏はコロナ禍の影響で他産業が求人を控えていることを背景に、「建設業に関係のない学科から、インターンシップの受け入れ要請があった。現下の情勢はひとりでも多くの人に(建設業に)目を向けてもらえるチャンス」との見方を示した。

 山浦氏は「自分の子どもに自分の仕事を正しく伝えることができなければ、他の子には理解してもらえない」と担い手対策の根幹部分に水を向けた。

 最後に開会長が総括し、「労働環境の改善、新しい働き方・生産性向上、担い手確保はそれぞれの地域によって特有の課題があるが、共通の問題もあると感じた。そこと向き合い続け、チャレンジすることで地域建設業の新しい形が構築される。これからの人たちのために何ができるかを考えていこう」と締めくくった。

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