【カナリヤ通信】東北青年会『技術者物語』創刊10周年 | 建設通信新聞Digital

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【カナリヤ通信】東北青年会『技術者物語』創刊10周年

 東北建設業青年会は、地域建設業の広報活動の一環として2013年に創刊した冊子『技術者物語』の10周年記念号(vol・10)を発刊した。東北6県の建設企業に従事する技術者らが入職の動機や仕事のやりがい・達成感、建設業の魅力などについてエピソードを交えながら語っている。これまで男性37人と女性23人の計60人が登場。記念号には、以前に掲載された技術者6人の「その後」も収録している。現会長のガーディナー司子氏のコメントとバックナンバーから女性技術者2人の“物語”を紹介する。

技術者物語vol.10

◆マルサ建設(秋田県横手市) 高橋奈美子さん/現場と家事両立し優良表彰受賞

マルサ建設(秋田県横手市) 高橋奈美子さん

 秋田県発注の建設工事で女性技術者として初めて優良表彰を受賞した高橋奈美子さん。湯沢高校(普通科)から保育士の資格を取ろうと宮城学院女子大学教育学科幼児教育専攻に進み、幼稚園教諭一種と保育士免許を取得した。
 しかし、建設会社を営む父の背中を見て育ち「自分も地域の役に立つ仕事がしたい」との思いから選んだ職業は、女性警察官だった。どこも採用人数は少なかったが、がむしゃらに勉強し、栃木県警の合格を勝ち取った。
 「地域の役に立つ」という願いはかなったものの「地元の秋田で働きたい」との思いがどんどん大きくなったこともあり、約6年間の警察官生活にピリオドを打った。
 帰郷後は、父が経営するマルサ建設に入社した。最初は事務の手伝いがメインだったが、工事写真を撮ったり、測量の補助をしたりと、少しずつ現場での仕事が増えていった。
 そのうちに、自分が関わった構造物が形になっていく喜びと仕事に対するやりがいを感じるようになった。
 その後、1級土木施工管理技士の資格を取得し、優良表彰を受賞した防雪柵設置工事で初めて現場代理人を務めた。
 現場に入ったのは、2人目の子どもを出産してわずか2カ月後だった。現場代理人として「自分がしっかりしないと現場が動かない」というプレッシャーに加え、子どもたちの入院や発熱で仕事を休まなければならない時もあったが、「現場のみんながサポートしてくれた。工事が完成した時のうれしさはひとしおだった」と振り返る。
 「子どもの頃、父から『建設業は大地を彫刻し、地図に残る仕事だ』と教えられた。本当にそう思うし、何よりも地域の役に立ち、喜ばれることがうれしい」という。「今後も“縁の下の力持ち”として、地域の人たちとのつながりを大切にし、頑張っていきたい」と力を込める。

◆大和建設工業(福島県金山町) 酒井美優さん/根気でつかんだ建機オペレーター

大和建設工業(福島県金山町) 酒井美優さん


 小柄な体に不釣り合いな大きなショベルカーの操縦席に乗り込み、バケットをパワフルかつ正確に操るのは、大和建設工業で建設機械オペレーターを務める酒井美優さん。
 中学生時代に自宅で建物の設計図を描く父の姿を見て建築に興味を持ち、地元の福島県立会津工業高校の建築系学科に進んだ。
 建築士を目指して学業にいそしんでいたが、高校2年の時にインターンシップ(職業体験)で訪れた現場実習で酒井さんの目に止まったのは、ダンプカーを運転する一人の女性ドライバーの姿だった。「同じ女性なのに大きなダンプカーをさっそうと操る姿が、かっこよく見えた」ことがきっかけとなり、建設機械オペレーターとして建設企業への就職を希望した。
 「一日も早く重機を操作できるようになりたかった」ため、在学中に「車両系建設機械整地運搬(3t)」などの資格を取得した。
 しかし、新規高卒者の女性オペレーターを受け入れてくれる企業はなかなか見つからなかった。諦めずに多くの企業の門を叩く中、「ぜひ当社でチャレンジしてみてください」と手を差し伸べてくれたのが奥会津・金山町にある大和建設工業だった。
 こうして憧れだった地域建設業のオペレーター職に就いた。電線埋設のための道路掘削やダンプへの土砂積み込みなど、日々先輩たちの指導を受けながら仕事に励んでいる。「バックホウは、2本のレバーだけで多彩な動きを実現できるところが楽しい」という。機械を手足のように自在に操れるようになれるよう、操作技術を磨き続けている。
 酒井さんは、同じ建設業というカテゴリーの中でも、運命的な出会いから異なる分野に飛び込んだ。その経験を踏まえ、これから建設業への入職を目指す後輩たちには「資格と熱意が大事。女性でも諦めずにチャレンジしてほしい」とエールを送る。

◆東北建設業青年会 ガーディナー司子会長/新4K目指して改革を

東北建設業青年会 ガーディナー司子会長


 『技術者物語』が創刊10号を迎えることができ大変うれしく思います。地域建設業に入職を希望する学生の皆さんに就活ツールとして活用していただきたいという思いから、地域建設業が果たしている役割の大きさや重要性を伝えるとともに、技術継承・伝承の必要性に理解を深めてもらうため、技術者にスポットを当てて情報発信することを目的に創刊いたしました。
 地域建設業は、皆さんが快適に暮らす環境の整備や維持、安全・安心な暮らしを守る「地域の守り手」であり、エッセンシャルワーカーとして社会的使命を果たしております。
 現在、後継者問題や若者の入職者不足が大きな課題です。「女性活躍推進」によって多様化やグローバル化が進み、ここ数年で女性の入職者も着実に増加し、現場が活性化しております。新4K(給与・休暇・希望・かっこいい)を掲げ一緒に選ばれる業界改革をしていきましょう!



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