【加賀建設】SDGs達成へ 新たな価値づくりに挑戦 「見える化」戦略で建設業の社会的存在感アピール | 建設通信新聞Digital

4月26日 金曜日

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【加賀建設】SDGs達成へ 新たな価値づくりに挑戦 「見える化」戦略で建設業の社会的存在感アピール

 ことし1月、加賀建設の4代目社長に就任した鶴山雄一氏。現在の最重要課題は「人づくり」だ。その指標として2017年からSDGs(持続可能な開発目標)を採用し、社内体制の整備に取り組んでいる。「自分の頭で考え行動できる人を生み出し育てていきたい」という。SDGsの活用には、ユーチューブによる動画などとともに企業という存在の「見える化」効果も期待している。「従来型(の広報)では若い人は来てくれないし、定着しない」との危機感があり、建設業個社として「『見える化』は若年者確保にいまや不可欠」と強調する。本社脇に開業して盛況の続く直営の飲食店「お味噌汁食堂 そらみそ」も「見える化」戦略の一翼を担っている。

鶴山雄一社長


◆世界的視座からの「見える化」不可欠/新たな価値づくりへ挑戦

 同社は金沢市の沿岸部、金石地区に本社を置く、港湾工事に強みを持つ総合建設業。同地区は二級河川犀川が日本海に注ぎ、金石港を持つ歴史ある港町だ。1943年に造船会社として創業した同社は、その後の造船需要落ち込みの中で木造船建造技術を応用して建築事業に参入。
 63年の「三八豪雪」を契機に金沢港建設計画が持ち上がると港湾土木に進出するなど、これまで時代の潮目を読みながら社会変化を先取りし、果断に新しい価値づくりに挑戦し続けてきた。こうした挑戦の精神の根底には「地域に恩返しをしたい」という強い思いが連綿とあるという。
 古い街並みや自然の残る地元金石地区も近年、人口減少などで活力が失われつつある。鶴山社長は専務だった16年、本社脇に同地区の情報発信拠点となる複合施設「コッコレかないわ」を新設し、地区活性化へとアクションを起こした。施設内には地元の食材を使った「お味噌汁食堂 そらみそ」や物販店を開設。今月20日には激戦区である金沢駅ナカへの「そらみそ」2号店オープンにこぎ着けた。また、金石で古くから親しまれている金棒茶を焙煎し、販売するカフェも、古民家をリノベーションして本社近くにことし2月に開店するなど、“恩返し”は地域活性化事業として加速している。

複合施設「コッコレかないわ」

3月20日にオープンした「そらみそ」金沢駅店

 そんな中でなぜSDGsの活用なのか。鶴山社長は15年の国連サミットでSDGsが採択される4年前の11年、常務として「建設通信新聞」の取材にこう答えている。
 「この(建設業という)商売で“食っていく”には、自分の会社だけ、自分の周りだけを見ていては結局生き残っていけない。日本を、世界を見ないとだめだ。社会インフラの整備やその担い手である建設産業の必要性を、広い視点で大きなビジョンを示しながら、国民の意識に届くよう説明していくことが必要だ」
 SDGsの活用理由といっていい。しかし当時とは一転し産業間の人材獲得競争が激化しているいま、SDGs活用に期待するのは少し違うところもある。「SDGsを利用することで、働いている自分たちの仕事の社会的な意義や役割を世界共通の問題やキーワードを指標にしてとらえ返し、客観化できる。若い人たちに建設業や建設個社が行っている仕事の意義や社会的役割を理解してもらうにはいま、そうした『見える化』が不可欠になっている」という。

次世代に向けたSDGs推進

 自分たちの仕事をユーチューブ動画でビジュアルにリアルに見せ、さらにSDGsを使いグローバルなテーマに関連づけることで社会的存在感をアピールできる。「いまの若い世代は社会や地域への貢献というテーマにとても敏感」で、ホームページのリクルートサイトに動画を多用し始めてから明らかに反応が変わったという。
 「日々の受注は確かに大事だが、工事を請け負ってただ計画通り進めるのではなく、持続可能な社会に向けた世界的問題意識からその工事の持つ意味を主体的に捉え、それが世界の環境や社会、経済に与える影響を探りながらSDGsを達成していく。その一連の作業を『見える化』していくこと自体が企業としてのリアルな広報にもなる」
 創業以来「地域への恩返し」を胸に受け継いできた挑戦者の系譜は、地域建設業としての同社の現在を世界的視座から捉え直し、見える化し、発信していくことで社会や新たな人材とつながっていくという、新たな価値づくりへの挑戦を始めている。
 
 
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