【実施件数着々と増加中】ICT活用工事の拡大を進める兵庫県 見えてきた効果と課題とは? | 建設通信新聞Digital

4月18日 木曜日

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【実施件数着々と増加中】ICT活用工事の拡大を進める兵庫県 見えてきた効果と課題とは?

 兵庫県は、建設業の担い手不足の解消や生産性向上を目的とし、積極的にICT活用工事の拡大を進めている。これまで、地方自治体として関西はもとより、全国でもトップランナーといえる実績を積み重ね、発注者指定型・受注者希望型をあわせた実施工事の件数は2018年度が41件、19年度が112件と着実に数字を伸ばしてきた。20年度も地元建設企業への周知や導入支援などに取り組み、さらなる増加を目指していく。

 兵庫県の対象工種は国に準拠しており、現在は当初からの土工に加え、舗装工(路盤)、河川浚渫工、地盤改良工、作業土工(床掘)、付帯構造物設置工、法面工でも実施している。今後も「国の動きに追従する形で、適宜工種を拡大していきたい」(中田和秀県土整備部県土企画局技術企画課班長)方針だ。

中田班長


 実施件数の増加はこの工種拡大が主要因だが、大幅な工種拡大が19年9月以降の適用となったため、19年度の件数にその増加効果は半期分しか反映されていない。
 このため、20年度もさらに件数が増加する見込みだが、県はそういった「自然増」だけではなく、受注者希望型における実施率の底上げによる件数増も課題と認識している。

 19年度の発注実績を見ると、発注件数は発注者指定型75件、受注者希望型が181件の計256件。これを実施件数でカウントすると、発注者指定型は同じく75件、受注者希望型は37件で計112件となる。つまり受注者希望型での実施率は約20%にとどまっており、ここにさらなる取り組みの余地がある。

 土工であれば土工量5000m3未満など、受注者希望型は小規模な工事に適用される。このため、実施率を高めることは中小の地元建設企業にICTを浸透させることと同義であり、県は普及・周知のためのICT講習会・研修にも引き続き力を入れていく考えだ。

 19年度は受注者向け研修会・体験会を計29回開催し、延べ1100人余りが参加している。その内容も単に画一的なものではなく、3次元設計データや3次元出来形管理帳票の作成、ICT建機や測量機器の実機体験、ICT活用工事の現場見学など多彩だ。

 一方で、実際の工事の窓口となる各地の出先事務所の職員らを対象とする発注者向けの研修・説明会も23回開催し、延べ1000人以上が参加している。「事務所ごとに取り組むだけでは職員にノウハウが蓄積されにくい。知見などを職員同士で共有できればと思っている」とその狙いを説明する。

 また、ICT活用のハードルを少しでも下げるべく、発注者の技術力に応じてICT活用の内容を選択できるようにしているのも大きな特徴だ。
 (1)3次元起工測量(2)3次元設計データ作成(3)ICT建設機械による施工(4)3次元出来形管理資料などの作成(5)出来形確認と検査(6)納品–にプロセスを分け、このうち(3)のみ実施するケースや、(1)・(2)・(3)、(1)・(2)・(4)の組み合わせで実施することが可能だ。
 ただ、一部のみの場合は工事成績で2点、全6プロセスなら5点が加点されることもあり、現状では実施する企業はほとんどが全プロセスを選択している。

 ICT活用工事の効果については「電波が入らずICT建機を使えないといった工事もあるが、おおむね良好な結果が得られている」という。
 例えば、掘削量約3万m3、法面整形約1500㎡の河川土工においては、丁張り設置が不要になることなどで、作業日数を標準工期539日から294日へと大幅に短縮。舗装工では延べ作業工数を半減できた事例もあった。

 県は中小建設企業のICT導入促進に向け、「実施を希望しなかった企業へのアンケートなども実施し、制度の改善に反映させていきたい」と今後も前向きに取り組む姿勢を示し、各企業には「ICTをやってみたいがどうしていいか分からないなど、困っていることを相談してもらえれば、できる限りサポートする。まずは踏み出してもらいたい」と呼び掛ける。

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