【COP26へ下準備急ぐ】環境省が温室効果ガス排出量削減 政府目標の引き上げで協議開始 | 建設通信新聞Digital

5月2日 木曜日

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【COP26へ下準備急ぐ】環境省が温室効果ガス排出量削減 政府目標の引き上げで協議開始

 環境省が地球温暖化対策に関する政府内の調整を加速している。2019年12月の国連気候変動枠組条約第25回締約国会議(COP25)で、日本が消極的と国際社会に受け止められ批判を浴びたためだ。温室効果ガスの排出量を、30年度に13年度比26%減とする政府の中期目標引き上げに向け、協議を開始することで他省庁の合意を得るなど、21年に開催が予定されるCOP26への下準備を急いでいる。

温室効果ガス排出量の確報値(単位・100万トン、Co2換算)


 環境省が14日に発表した18年度の温室効果ガス排出量(確報値)によると、二酸化炭素換算の排出量は前年度比3.9%減の12億4000万tだった。08年のリーマン・ショックに伴う経済活動停滞の影響で、排出量が減少した09年度の12億5100万tを下回る水準。5年連続で減少するとともに、13年度比では12.0%減っており、「順調に推移している」(環境省地球環境局総務課脱炭素社会移行推進室)。

■今後の課題はフロン類抑制
 このうち、全体の9割を占める二酸化炭素は、前年度比4.4%減、13年度比13.6%減の11億3800万tだった。原子力発電所の再稼働と再生可能エネルギーの普及が進んだことや、省エネと暖冬の影響などでエネルギー消費量が落ち込んだことが主な要因だ。
 メタン、一酸化二窒素も着実に減少する一方、代替フロンのハイドロフルオロカーボン類は増加している。環境省は二酸化炭素より温室効果が高いフロン類の排出抑制を今後の課題に挙げ、建物解体時の適切なフロン類回収など、1日に施行された改正フロン排出抑制法に基づく取り組みを進める方針だ。

■30年度の目標は13年度比26%減
 30年度に13年度比26%減とする中期目標は、15年7月に国連へ提出した「日本の約束草案」(INDC)で、政府が掲げたもの。16年5月に閣議決定した地球温暖化対策計画にも位置付けている。
 その後、産業革命前からの世界の平均気温上昇を2度未満に抑える目標を設定したパリ協定が同11月に発効された。国連は、パリ協定の目標達成に向けた温室効果ガス削減目標を「自国が決定する貢献」(NDC)として20年までに提出するよう求め、目標の上積みを迫る。
 環境省はCOP26に向けて「野心的な思いを持って取り組む」(小泉進次郎環境相)姿勢を発信する必要があると訴え、温室効果ガス削減と密接不可分なエネルギー政策を所管する経済産業省などと交渉。NDCは2段階で提出し、第1弾を「削減目標を確実に達成するとともに、それにとどまることなく削減努力を追求する」と記述することで合意した。20年度に地球温暖化対策計画を見直し、追加情報を第2弾に盛り込む。
 新たな削減目標の設定に当たってはエネルギーミックスの改定と整合を取る必要があるため、計画期間が21年7月までとなっているエネルギー基本計画の見直しに合わせて、具体の数値目標を詰めることにした。第1弾は3月に提出済み。
 環境省は石炭政策のあり方も問題提起し、二酸化炭素の排出量が多い石炭火力発電の輸出を公的支援する4要件見直しの結論を6月に出すことで、経産省や外務省などの関係省庁と2月に合意した。2日には「石炭火力発電輸出への公的支援に関する有識者ファクト検討会」を設置。協議に向けて、関係省庁が立場を超えて共有できるファクト(事実)の整理を進めている。

■環境、エネルギー大所高所から議論
 環境とエネルギーは世界的な関心事。政府は中西宏明日本経済団体連合会長の提案を受け、未来投資会議の下にそれらをテーマとする会議体を設置し、骨太のビジョンを策定する方針を3月に決めた。月内にも開かれる初会合では、小泉環境相と梶山弘志経済産業相がそれぞれの立場から意見表明する予定になっており、エネルギー基本計画の改定を見据え、一体的な関係にある環境とエネルギーのあり方を大所高所から今後議論することになる。

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