【建設ICT新時代へ】中和コンストラクション 現場・社内両面からの改革で目指す未来とは | 建設通信新聞Digital

5月4日 土曜日

B・C・I 未来図

【建設ICT新時代へ】中和コンストラクション 現場・社内両面からの改革で目指す未来とは

 「施工だけでなく、事務作業の面でもICT化に取り組み、働き方改革へとつなげていきたい」とは、中和コンストラクション(奈良県桜井市)の大浦晃平社長だ。2019年7月にICT推進室を発足させ、ICT活用工事への対応を本格化させるとともに、現場の事務作業を広域的にコントロールする体制の確立にも乗り出した。

大浦社長


 国土交通省がi-Constructionの方針を掲げ、直轄工事でICT活用に乗り出すタイミングに合わせるように、同社も現場へのICT活用を推し進めてきた。初弾となったのは15年の台風21号で被害を受けた奈良県十津川村の災害復旧工事で取り組んだICT活用工事だった。その後も継続してICT活用工事に取り組み、17年には無人化施工にも取り組んだ。「現場所長の頑張りや近畿地方整備局からの支援もあり、完全無人化を実現し、これが社としてICT活用に舵を切るきっかけにもなった」と振り返る。

 ことし5月で工事の完了を予定している近畿地方整備局大和川河川事務所発注の佐保川中流部河道掘削他工事現場では、ドローンによる測量に加え、マルチビーム測量で水中部の現況把握、さらには不可視の水中部をリアルタイムにモニタリングするなど精力的にICT活用を進めた。「所長を含め全員が20代の若手社員で構成しており、ICTへの抵抗もなく、前向きに取り組んだ成果の1つ」と考えている。

 ICT推進室の発足も「そうした成果を蓄積し、そのノウハウを会社の財産にしていきたい」との思いからだ。現在の体制は十津川村の災害復旧工事現場と佐保川中流部河道掘削現場を担当した2人が担うが、活用現場が増えるにつれ、組織を拡充する計画。「まずは社内の意識改革を進めながら、ICTを有効活用できる現場には積極的に取り入れる。国や自治体が発注するICT活用工事についても前向きに受注する」と力を込める。

精力的にICT活用を進めた佐保川中流部河道掘削他 工事現場の点群データ画像


 4週8閉所(週休2日)の実現は「気合いと根性だけでは成立しない」だけに、いかに現場を省力化・効率化できるかが重要になる。「生産性向上につなげる選択肢としてICTの活用がわれわれ地域建設業にとって強く求められる」。同社は現場へのICT活用に並行して、社内業務のIT化にも舵を切る。書類のデジタル化を推し進めるとともに、現場事務をより効率的に進める役割として、高いITスキルを使って現場支援する人材を投入。「このスーパー事務職員を軸に、本社から現場事務を広域的にコントロールできる体制も確立していく」という。

 現在は、土木部門と建築部門それぞれで社内の書類が異なる部分も多く、デジタル化に合わせて、書類の統一も図る。「現場と社内のICT化が完了すれば、より効率的な会社運営が実現する。いまはまだ試行錯誤しているが、いろいろ試しながら最適解を見つけていきたい」と、しっかりと先を見据える。

 現場の点検などをより効率的に進める手段として、体に装着しハンズフリーで撮影できる小型カメラ「ウェアラブルカメラ」を導入するほか、社内の情報共有をより円滑に進める枠組みとして、パソコンやスマートフォンを使い、オンラインで気軽にミーティングできるビデオ会議システム『Zoom』の導入も積極的に進め始めた。

 大浦社長は「地域建設業として、まずは奈良で一番必要とされる会社を目指す。そのためにも社員が生き生きと働ける環境を整えることが近道」と確信している。

建設通信新聞電子版購読をご希望の方はこちら