【首都圏のシェア20%確保へ】長谷工コーポレーションの超高層マンション受注拡大戦略とは | 建設通信新聞Digital

4月25日 木曜日

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【首都圏のシェア20%確保へ】長谷工コーポレーションの超高層マンション受注拡大戦略とは

 長谷工コーポレーションは、2021年3月期から開始した5カ年の中期経営計画「HASEKO Next Stage Plan(NS計画)次なるステージへの成長を目指して」における重点戦略の1つに超高層マンションの受注拡大を掲げている。4月には建設部門・設計部門それぞれに専門部署を新設し体制を整備。一丸となって目標の「首都圏の新築タワーマンションのシェア20%確保」に向け取り組みを加速させている。

設計施工を手掛けた地下1階30階建ての超高層物件「ルミナリータワー池袋」


 初年度の21年3月期は、同社全体での受注目標4500億円のうち10-13%程度、約450億-500億円をタワーマンションで担うことを目指す。超高層プロジェクト推進の中核を担う1人である三田村恒尚建設部門執行役員は、「これまでどおりに板状の分譲マンションを手掛けているだけでは目標の数値を達成できないため、それを補完するものが必要だ」と指摘する。オフィスやホテルなど非住宅の受注も進めているが、これらは他社との競争も激しく年ごとに受注量が変動し、利益率も社内の目標に届きにくいことから、タワーマンションに白羽の矢が立てられた。

三田村執行役員


 4月に新設された専門部署は、建設部門の「超高層プロジェクト推進1部」「同2部」と設計部門の「超高層プロジェクト推進室」の3つで、現在は合計で15人が所属する。

 超高層プロジェクト推進1部は、概算積算業務とデータベース等作成業務を担当する。積算部・購買部と連携して、超高層物件に関する受注促進案件の概算積算をしながら、その手法やデータベースを確立して概算精度の向上と期間の短縮を目指す。

 推進2部は、受注促進案件の取り組みと工法などの検証を担う。設計部門や技術研究所と連携し、超高層・非分譲マンション・非住宅案件の受注促進案件の施工計画やコンペ案件における技術提案資料を作成するとともに、工期短縮・コスト削減のための工法検証、技術の蓄積に取り組むことで、競合他社に勝てる技術力を身につけていく。

 具体的な技術として、三田村氏はPC積層工法などを挙げるほか、「再開発や駅前でのタワーマンション建設となると、既存の建物の地下構造物が残っている状況が考えられるが、当社としてはまだ経験が足りない部分であり、かつコストにも大きく影響してくる。いろいろな形で知見を深め、適切な計画と工期・金額で施工できるよう取り組んでいく」と語る。

 設計部門の超高層プロジェクト推進室は、タワーマンションや非分譲、非住宅案件の企画設計案作成支援や仕様設定支援を始め、工事費分析・概算工事費算出支援、受注・着工促進業務に当たるほか、規格化や標準化などの技術的課題の解決とノウハウの蓄積も役目としている。

 松澤明彦設計部門執行役員は「板状マンションで培った経験に加え、ここ数年、超高層の実績も増えてきたため規格化・標準化のベースが確立されてきており、板状マンション同様の施工の合理化・効率化につながってきている」と説明。また、同社は21年3月期から板状マンションを100%BIMによる設計としているが、「タワーマンションについてもそのラインに乗せることができれば、BIMデータを工事に活用し、合理化・省力化が可能になる」と強調する。

松澤執行役員


 今後の抱負について、三田村氏は「新築分譲マンション市場が縮小傾向にある中で、タワーマンションや非分譲・非住宅の事業領域を拡大することによる事業量確保を考えている。タワーマンションについては年々実績を積み重ねているが、駅前や複合施設、再開発案件などこれまであまり手掛けていない案件に積極的に挑戦していきたい」と語る。松澤氏は「長谷工の超高層はまだまだこれからという状況だ。ただ、検討案件や実績は増えてきており、当社の得意とする規格化・標準化を検討して事業主に提案することで、シェアを伸ばしていきたい」と意欲を示した。

4月には特設サイトも立ち上げ、実績や技術などをアピールしている

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