【暑さ対策もしっかりと】環境省・気象庁「熱中症警戒アラート」 関東甲信1都8県で試行へ | 建設通信新聞Digital

5月3日 金曜日

公式ブログ

【暑さ対策もしっかりと】環境省・気象庁「熱中症警戒アラート」 関東甲信1都8県で試行へ

 環境省と気象庁は、熱中症への警戒を共同で国民に呼び掛ける新たな情報発信の仕組みを2021年度に始める。暑さ指数(WBGT)が一定基準を超え、熱中症リスクが極めて高い気象条件が予測される場合、両省庁が「熱中症警戒アラート」を都道府県単位で発表。涼しい屋内への移動やこまめな休憩、水分・塩分の補給など、熱中症予防対策の徹底を求める。今夏に関東甲信地方の1都8県で試行して発表基準や運用方法を検証し、全国展開につなげる。

熱中症警戒アラートのイメージ


 消防庁のまとめによると、19年5-9月の熱中症搬送者数は7万1317人。記録的な猛暑となった前年同期に比べて2万3820人減ったが、それ以前は4-5万人台で推移しており、ここ数年で搬送者数が伸びた。その背景にあるのは気候変動の影響による気温の上昇。今後は毎年のように「災害級と言える暑さ」(環境省)になると懸念されるため、両省庁が連携して熱中症予防の効果的な情報発信に取り組み、注意喚起を強化することにした。

 熱中症警戒アラートは、環境省が公表しているWBGTをベースとする。人体に与える影響が大きい▽気温▽湿度▽輻射(ふくしゃ)熱–の3つで計算するWBGTは、熱中症搬送者数と高い相関関係があるため。国民への情報伝達に当たっては、気象庁が確立している防災気象情報伝達の流れを活用。両省庁の強みを組み合わせた仕組みとする。アラートの開始に伴い、気象庁が気温35度以上の予想で発表している高温注意情報は21年度に廃止する。

 今夏には関東甲信地方の1都8県でアラートを試行する。期間は7-10月。WBGT33度を試行の発表基準に設定し、基準を超えると予想される場合、前日午後5時ごろと当日午前5時ごろにアラートを発表する。東京23区でWBGT33度を上回ったのは、14-18年の5年間で計30回あり、アラートの発表は東京都で年6回程度となる見込み。

 日本生気象学会は「日常生活における熱中症予防指針」で、WBGT31度以上を「危険」と位置付け、外出をなるべく避けて涼しい室内に移動する必要があるとの見解を示している。WBGT31度を超えると熱中症搬送者数が大きく増加する傾向にあり、環境省は「熱中症警戒アラートはここぞというときに発表するもの。WBGT31度を超えた段階で、熱中症の予防行動を取ってほしい」と話す。

 試行の検証はアンケートとヒアリングで行う。アンケートは、1都8県の全市町村、建設業など熱中症リスクが高い事業者(数百者)、一般住民(最大1000人程度)を対象とする。ヒアリングは、市町村と熱中症発生リスクが高い事業者に対して実施する。秋に検証を始め、その結果を踏まえて全国で実施する21年度の運用方法を決める。21年度もWBGT33度を発表基準にするかは未定で、地域によって変える可能性がある。

熱中症による業種別死傷者数(2015-19年計)


 厚生労働省のまとめによると、熱中症による19年の死傷者数(死亡者数と休業4日以上の業務上疾病者数の合計)は、全産業で349人減の829人。過去10年で2番目に多い。建設業は86人減の153人だった。15-19年の合計でみると、建設業の死傷者数は759人で、うち死亡者数は46人。業種別で死傷者数、死亡者数ともに最多となっている。

 WBGTを自ら計測し、大型扇風機やドライミスト、遮光ネットを活用して数値の低減に取り組むなど、多くの建設現場でWBGTを活用した熱中症対策が講じられており、熱中症警戒アラートは建設業界でも注目されそうだ。

建設通信新聞電子版購読をご希望の方はこちら