【目標達成へ大量導入】一般海域での洋上風力発電 経産省と国交省が実施公募手続き開始 | 建設通信新聞Digital

4月27日 土曜日

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【目標達成へ大量導入】一般海域での洋上風力発電 経産省と国交省が実施公募手続き開始

 経済産業省と国土交通省は、再エネ海域利用法に基づき、一般海域で洋上風力発電を実施する事業者の公募手続きを始めた。再生可能エネルギーの発電比率を2030年に22-24%まで高める政府目標の達成に向け、ポテンシャルは高いものの18年時点の実績では約2万kWにとどまっていた洋上風力発電の大量導入を進める。

 海洋再生可能エネルギー発電設備整備促進区域の第1号に指定された長崎県五島市沖の公募占用指針を公表した。五島市沖は水深が100-150mと深いため、浮体式の設備で発電することを条件に30年間の占用を認める。

 最大受電電力の限度は2.1万kW。発電設備の出力は、2.1万kWから20%減じた1.68万kW以上に設定した。出力の上限は設けていない。固定価格買取制度(FIT制度)における調達価格の額は1kW時36円となる。発電設備の設置や維持管理に必要な人員・物資の輸送に当たっては福江港(五島市)を利用できる。

再エネ海域利用法の概要

◆占用計画12月24日まで受付
 単体の企業または複数の企業で構成するコンソーシアムから公募占用計画を12月24日まで受け付けており、21年6月ごろに選定結果を公表する。

 公募占用計画の評価は、供給価格(120点)と事業実現性に関する要素(同)の2つの観点で実施するとされていた。だが、この案件は調達価格が決まっているため、供給価格は全ての計画を満点とし、価格競争を実施しないで、事業実現性に関する要素のみを評価する。

 事業実現性に関する要素は、事業実施実績や事業計画の実現性など「事業実施能力に関する項目」(80点)と、関係漁業者や関係海運業者との協調・共生方法など「地域との調整や事業の波及効果」(40点)の2つに分ける。

 ここでポイントとなるのが事業実施実績だ。一般海域における洋上風力発電事業の国内実績はほぼ存在しない。そのため、▽風車の設置▽海洋土木工事▽維持管理を含む発電事業の運営–の3つの取り組みについて、事業を実施・管理する事業者とEPC(設計・調達・建設)などを実施する事業者を評価対象とする。EPCなどの実施事業者が公募段階で決まっていない場合は、候補者として関心表明書を提出した協力企業を評価する。

 五島市沖以外は、「秋田県能代市、三種町、男鹿市沖」「秋田県由利本荘市沖(北側)」「由利本荘市沖(南側)」「千葉県銚子沖」の4区域で、促進区域の指定に向けた地元同意を得た。両省は7月に指定する見通しで、公募手続きはその後始める。4区域の事業者は着床式の発電設備で公募する考えだ。

◆基地港湾の整備事業進む
 8-10メガワット級でブレードの直径が160mに上るなど、洋上風力発電の設備は重厚長大で、組み立て・保管が可能な耐荷重と広さを備えた港湾の埠頭が欠かせない。

 そのため、再エネ海域利用法の円滑な施行に向け、国交省が指定する海洋再生可能エネルギー発電設備等拠点港湾(基地港湾)の埠頭を洋上風力発電事業者に30年間貸し付けることができる制度が、2月施行の改正港湾法で創設された。

 基地港湾の指定には港湾計画の改定を要し、能代港(能代市)、秋田港(秋田市)、鹿島港(茨城県鹿嶋市・神栖市)、北九州港(北九州市)の4港の港湾管理者が計画を変更した。埠頭の地耐力を強化するなどの港湾整備事業が進められている。

 国交省は、促進区域に指定する4区域の事業者公募に合わせて、4港を対象に基地港湾の指定を初めて実施する。浮体式は着床式より設備の重量が軽いため、五島市沖の発電事業で利用可能とした福江港は現行の機能で対応可能として、基地港湾に指定していない。

 日本風力発電協会は、30年に1000万kWの洋上風力発電を導入する目標を掲げている。目標を達成した場合、直接投資が30年までの累計で5兆-6兆円程度、経済波及効果が30年までの累計で13兆-15兆円程度、雇用創出効果が30年時点で8万-9万人程度になると試算しており、経済の面からも洋上風力発電の導入促進は重要となる。

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