【記者座談会】リニア初のトップ会談/建設関連団体の会長交代 | 建設通信新聞Digital

4月19日 金曜日

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【記者座談会】リニア初のトップ会談/建設関連団体の会長交代

A リニア中央新幹線の工事再開をめぐって川勝平太静岡県知事と金子慎JR東海社長による初のトップ会談が6月26日に同県庁で開かれた。
B 焦点となっていた南アルプストンネル(静岡工区)掘削の準備工事となるヤード整備について、金子社長は国の有識者会議の結論が出る前にトンネル掘削に着手することは「絶対にない」と繰り返し強調した上で、6月中にヤード整備を始めないと2027年度の東京~名古屋間開業に間に合わないとして知事の同意を何度も求めたが、川勝知事は最後まで明言を避けた。
C 知事はリニア建設の意義や重要性には理解を示しつつ、大井川や南アルプスの水資源と環境保全は「リニアと同様に国策」であり「これをどう両立させていくか、ともに考えていくべき問題だ」と強調。特にかつて丹那トンネル工事の影響で「芦ノ湖の3倍の水が失われた。一度失われた水は戻らない」と指摘し、国の会議がエンドでなく、県が設置した専門家会議に持ち帰り、地元の納得が得られて初めて次のステップの話ができるという姿勢を崩さなかった。
B 一方で、トンネル本体工事と切り離すことを前提に、ヤード整備については「(改変面積が)5ha以上は環境保全に関する県の条例に基づき協定を締結する必要がある」として、あくまで行政手続きの範疇であることを示唆したけれど、会談後の記者会見では一転してヤード整備はトンネル本体工事と一体であり、一切認められないとの発言があったと報道された。
C これにはJR東海側も話が違うとしてヤード整備の可否について県の見解を確認する文書を6月29日に送り、3日までの回答を求めている。ただ、例え準備工事が認められたとしてもトンネル掘削に対しては地元市町を含めて了解を取り付けるのは至難の業だけに、工事に要する期間を逆算すれば事実上27年度開業に赤信号が点灯したと言える。

静岡県の川勝知事とJR東海の金子社長による初のトップ会談は県知事室で開かれ、県のウェブサイトでリアルタイムに配信された

◆新時代へ課題山積も船出に意欲

A ところで建設関係団体のトップ交代が相次いでいる。
D 全国建設業協会の会長職は在京・在阪の建設企業の代表が交互に務めるケースが多く、今回も近藤晴貞氏(西松建設特別顧問)から奥村太加典氏(奥村組社長)にバトンタッチされた。奥村新会長は創業家出身の社長として約20年にわたり経営のかじ取りを担っており、協会運営でもその手腕に期待が掛かる。週休2日や建設キャリアアップの普及など課題も山積するが、歴代の会長と同様に「地域に求め続けられる建設業」を念頭に、地域建設業の発展に向けて各都道府県協会や会員企業の声に耳を傾ける姿勢が不可欠だろう。
E 建設業労働災害防止協会では会長職を21年の長きにわたって務めた錢高一善氏が勇退した。新会長に就いた今井雅則氏とは出身地が近く、気心が知れている様子で「見識が広く、将来を見通せる」と信頼を寄せて後を託す姿が印象的だった。
F 建築団体では、日本建築士会連合会の新会長に近角真一東京建築士会会長(集工舎建築都市デザイン研究所所長)、日本建築士事務所協会連合会は児玉耕二東京都建築士事務所協会会長(久米設計監査役)が新会長に就いた。ともに新型コロナウイルス感染症への実効ある対策に強い意欲を見せている。
G 士会連合会の会長を勇退した三井所清典氏は理事会後のあいさつで4期8年の活動を振り返り、時折声を詰まらせながら都道府県建築士会や事務局などに謝意を示した。東日本大震災の復興への取り組みや、2度の建築士法の改正など激動の時代に会長を務め、感慨もひとしおだったのだろう。時代の転換点にいるとも感じたね。

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