【記者座談会】建設キャリアアップシステム財源問題 | 建設通信新聞Digital

5月5日 日曜日

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【記者座談会】建設キャリアアップシステム財源問題

A 利用料金の引き上げと、建設業団体に開発経費の追加負担を求める建設キャリアアップシステムの財源問題が話題になっている。
B 加入者が増えれば増えるほど赤字がかさむ料金設定、初期開発投資額が過少にもかかわらず、システム機能の追加開発が不可欠な状況に陥ったことに端を発するが、技能者・事業者登録に歯止めが掛かるとの見方は強い。
C システムの執行体制、意思決定を指導してきた国土交通省は運営悪化の責任を認めている。ただ、業界側の「国費を投入してほしい」との要望に対し、国交省は「民間主導のシステムであることから、受益者(利用者)負担をお願いしたい」と要請している。
D 建設キャリアアップシステムは技能者の処遇改善を担う制度インフラとして期待されるだけに、今回の一件に肩を落とす関係者は少なくない。元請企業、下請企業、建設技能者ともシステム運用を頓挫させてはならないことは十分に理解しているものの、今後の運営体制や再発防止策などが明らかにならない中で、一方的に費用負担を押し付けるという解決策に利用者から理解が得られるかは不透明だ。
C 国交省は建設キャリアアップシステム運営協議会運営委員会の開催頻度を増やし、収支状況のモニタリング体制を強化する考えを示した。さらに、ゴールドカード技能者を対象とした建退共掛け金の大幅引き上げ、建設キャリアアップシステム義務化モデル工事に伴うICカードリーダーの設置費用、現場利用料(カードタッチ費用)の後精算などを検討することを明かしたね。
B 運営体制のモニタリングの強化は財源問題を解決する上で絶対条件だろう。一方、システムメリットの追加について、ある団体の幹部は「システム運用が軌道に乗らない中で、利点ばかりを増やすのはいかがなものか。まずは運用当初に掲げたメリットを利用者の目に見える形にすべきでは」と苦言を呈している。

建設キャリアアップシステムの普及は岐路に立たされている

◆システム普及へ落としどころに注目

A 業界団体の手続きはどのように進んでいるのかな。
D 各団体とも料金引き上げと追加負担を分けて、対応するようだ。日本建設業連合会は、建設キャリアアップシステム推進本部内に設置したワーキンググループで料金引き上げを検証する。追加負担は、全法人会員に意見聴取を実施した上で、方向性を固める。8月にも最終的な対応方針を決定するとみられる。
B 全国建設業協会では、傘下の47都道府県建設業協会を対象に意向確認を実施している。料金引き上げは選択肢として「賛同する」「条件付きで賛同する」「賛同しない」の3つを設定。追加負担は「賛同する」「賛同しない」の2択だが、多くの協会が「条件付きで賛同する」とした項目を独自に設けて回答するようだ。
A 実際、東京建設業協会はいずれも条件付きで賛同する方針を既に表明しているね。
B 追加負担は、1つの団体として費用負担を了承するか否かの問題であるため、会員企業や傘下団体の一定程度の理解、つまり内部の合意形成が不可欠となる。
C 当初のシステム開発費を負担した建設産業専門団体連合会のある役員は、追加負担の要請に備え「出捐ではなく、システムが軌道に乗った後に返却してもらえる、貸し出しという形であれば会員団体を説得できるかもしれない」と提案している。
D 日建連の山内隆司会長が「多少の山や谷があろうとも、システムを推進していくというスタンスは変わらない」と話すように、システムの普及に向けた落としどころに注目が集まるね。

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