【記者座談会】建設キャリアアップシステム/コンサル経営統合 | 建設通信新聞Digital

5月1日 木曜日

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【記者座談会】建設キャリアアップシステム/コンサル経営統合

A 建設キャリアアップシステムの料金体系見直しが建設業界に波紋を広げているね。
B 見直しはシステム稼働に伴う累積赤字に端を発している。国土交通省の提案が二転三転したことで、建設業団体は会員企業・傘下団体への説明に追われている。6月に開かれた建設キャリアアップシステム運営協議会・運営委員会では、加入者が増えれば増えるほど赤字が拡大する料金体系によって累積赤字が56億円に達し、2020年度末には100億円を超えるとの説明があった。
C 国交省と建設業振興基金は赤字の拡大を食い止めるため、技能者登録料を引き上げるなどの料金体系改定と、20億円に上る開発費の追加負担を提示した。建設業団体からは、「料金値上げが加入のブレーキになる」などの声が上がっていた。
B 7月7日の運営協議会・運営委員会では、国交省が簡易型登録料と詳細型登録料で構成する2段階登録方式を提示。同31日の運営委員会では、料金改定の最終案として、簡略型登録料を据え置いて詳細型登録料は4000円に設定する考えを示した。
C さらに8月に入ってからは、詳細型登録料を4900円、ID利用料を950円に引き上げ、開発費の追加負担を16億円に圧縮する案が出された。これら度重なる料金変更などに業界側は困惑している。
B 7月末現在の技能者登録数は32万4390人で、初年度目標として掲げていた100万人を大幅に下回っている。“処遇改善の基本インフラ”として、19年4月に本格運用を開始してから1年以上が経過する中、各団体の思いは複雑だ。
C 8月中には運営委員会の総会が開かれる見通しだが、料金体系の問題などが決着し、国交省が目指している10月の料金改定に間に合うのか、引き続き注視したい。

2019年4月の本格運用開始から1年以上が経過する中、技能者登録数は伸び悩み、各団体の思いは複雑だ

◆同業・異業種、多様な連携・協業が活発化

A ところで大日本コンサルタントとダイヤコンサルタントが経営統合に向けて協議を開始した。
D 国内トップクラスの実績を持つ橋梁分野を始め、構造物の計画・設計に強みを持つ大日本コンサルタントと、地質リスクに精通し地質・地盤に強いダイヤコンサルタントの組み合わせは、まさに上下一体で土質・地質調査から構造物の設計・施工管理まで一貫して手掛けることができるシナジー効果が発揮しやすいカップリングじゃないかな。
E 事業領域や顧客基盤ともに重複が少なく、相互の顧客に対してより総合的で質の高いサービスを提供できることは大きなメリットといえる。直近の決算で売上高を合算すると約290億円だが、伸びしろはかなり期待できると思うよ。
D 同様の組み合わせでは先行するモデルがある。やはり橋梁分野に強い長大が11年7月に基礎地盤コンサルタンツを完全子会社化したが、海外での受注力強化を含め当初の狙いどおり相乗効果を発揮し、連結の売上規模は子会社化直前の合算が190億円だったのに対して20年9月期決算では304億円を見込むまでに成長している。
A 建設コンサル業界ではM&A(企業の合併・買収)が今後も進むのかな。
E 基幹となる国内公共市場が堅調に推移する中で、各社トップともM&Aには積極的な姿勢が目立つ。既存領域で弱点エリアや事業分野での営業力強化に向けた同業他社との合従連衡に加えて、事業マネジメントや地域経営の視点からのプロバイダーサービスなど新たな領域・市場を開拓・創出する上で、ICT系など従来にない異業種とのより広範で多様な連携・協業も従前以上に活発化していくだろう。

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