【BIM未来図・大和ハウス工業⑦】デジタル化見据え組織強化 到達点はBIMからDXへ | 建設通信新聞Digital

5月2日 木曜日

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【BIM未来図・大和ハウス工業⑦】デジタル化見据え組織強化 到達点はBIMからDXへ

 ことし4月に発足した大和ハウス工業の建設デジタル推進部は、2019年6月に視察した欧米のBIM先進企業を目の当たりにしたことがきっかけとなった。視察に同行した建設デジタル推進部の芳中勝清理事は、オートデスクとパートナーシップを結ぶ欧米の建設会社が「デジタルコンストラクションにかじを切り、大きな変貌を遂げようとしていた」ことに驚きを隠せなかった。

パートナーシップ契約を結ぶオートデスクとの海外視察


 同年11月には南川陽信上席執行役員が米国・サンフランシスコにあるオートデスク本社を訪れ、自動設計などの最新テクノロジーに触れ、「建設業の未来がどういう方向に進むか」を垣間見た。「海外のトップランナーはわれわれより何年も先を見通している」と実感した瞬間でもあった。

 前身のBIM推進部はBIMの導入率引き上げが役割だったが、建設デジタル推進部はBIMを中心としたデジタルテクノロジーを使いこなし生産改革を先導する組織へと移り変わった。組織規模も120人を超える体制に増強した。設計段階と施工段階の完全BIM化は「デジタルコンストラクションへの通過点である」と芳中氏が明かすように、将来に向けたデジタル基盤の構築が同部に課せられた。

 その先に見据えるのは、BIMを中心として建設データを集約・分析しながら、ステークホルダーと共有・活用する工業化建築サプライチェーンの「全体最適化」だ。これまで各プロセスで部分的な改善を追求してきたが、それぞれがつながっていないために全体最適の枠組みになっていなかった。

 振り返れば同社がBIM導入にかじを切ったのは17年4月。当時新設したBIM推進室では「当時からFMを含めた一気通貫のBIMを前提にしていた」と南川氏は振り返る。当初、社内ではBIMに否定的な声もあったが、着実な進展を遂げる中で設計段階でのBIM導入率が上がるにつれ、「いまではBIMの価値共有ができるようになり、こうした意識の変化が組織をけん引している」と実感している。

 同社には、事業全体のデジタルトランスフォーメーション(DX)という最終到達点があり、建築事業のDXについては建設デジタル推進部が担う。「行き着く先は、業務の省人化や無人化であり、デジタル化によって働き方を変え、オープンイノベーションにつなげ、次世代の建築工業化の扉を開くことだ」と芳中氏は力を込める。

 順調に進む建築のBIM化に対して、戸建て住宅分野のBIM化は商品系列の複雑さによって苦戦し、計画より1年ほど遅れている。しかし、今秋にもシステム構築を完了し、21年度から本格運用のステージに入り、新たな販売スキームの構築にも乗り出す。「建築分野に続いて、住宅分野でもBIMをリードしていきたい」と続ける。

 建築や住宅分野のデジタル化が“縦軸”とするなら、同社では企画・営業・施工・製造などの事業部門や、経営企画・人事・総務などの管理部門を対象とした“横軸”のデジタル化も同時並行で動き出している。

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