【BIM未来図・大和ハウス工業⑧】部分最適を全体最適に改革 デジタル軸に成長路線築く | 建設通信新聞Digital

5月5日 日曜日

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【BIM未来図・大和ハウス工業⑧】部分最適を全体最適に改革 デジタル軸に成長路線築く

 大和ハウス工業が社内横断でデジタル化を推進するDX(デジタルトランスフォーメーション)推進部を発足したのは2019年10月のことだ。現在は専任メンバーが7人のほか、関連業務と密接に連携するための部門長クラスを含む兼任メンバーを合わせ12人体制を確立した。同部の本多正幸部長は「われわれは会社全体のDXを担い、管理部門から事業部門まで横断的に改革を進めていく」と前を向く。

19年10月に発足したDX推進部を軸に組織改革


 完全BIM化を出発点に動き出した同社のDX戦略だが、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う事業活動や事業領域の環境変化で、逆に同部の目標がより明確になった。事業全体のデジタル化を推進するための基盤づくりという役割は発足当初から変わらないものの、会社として21年3月期の業績見通しを大幅に下方修正せざるを得なくなった状況を受け、「業績をV字回復させ、成長路線に戻すための道筋を整えることがわれわれの役割」と力を込める。

 現行の中期経営計画は、最終22年3月期に連結売上高4兆5500億円、連結営業利益4050億円を掲げている。計画初年度の20年3月期は連結売上高4兆3500億円、連結営業利益3830億円と計画どおりに推移したが、2年目となる今期の業績予想は新型コロナの影響により連結売上高で前期比16.7%減の3兆6500億円、連結営業利益は55.4%減の1700億円と大幅に引き下げざるを得ない状況となった。

 会社運営ではテレワークを強いられ、 業績の先行指標と言われる住宅展示場の来場者も大きく落ち込んでいる。新型コロナの影響が長引けば、日本経済は低迷期に入り、右肩上がりに推移してきた建築事業にも悪影響を及ぼし兼ねない。「事業のあり方、販売の手法、 さらには顧客との接触手段も含め、事業自体の変化を余儀なくされている。前提になるのは現在7万人近くのグループ規模を維持したまま、成長の道筋を描くことだ」

 会社全体のデジタル改革では、営業・販売促進・アフター・CS(カスタマーサービス)・企画・商品開発・購買・製造・施工・管理などの「事業領域」と、経営企画・人事・総務・情報システム・財務・法務・PM(プロパティマネジメント)・広報・宣伝・法令順守などの「管理領域」を束ねる横断的なプロジェクトを発足。現在はデジタルコンストラクションと働き方改革の2プロジェクトが始動し、そのほかにグループ顧客シナジー、事業拠点アセット軽量化などのプロジェクトも発足を準備している。

 「わが社はもともと多角化のポートフォリオで成長し、各分野で大手になっているが、それぞれが独立的に進んできた。社としてのデジタルインフラを整え、部分最適の組織を全体最適の枠組みに置き換えることがDXに向けた改革の目的である」と、本多氏はポイントを明かす。成長への重点領域である建築事業のデジタル化を統括する建設デジタル推進部とは両輪の関係として改革を先導するため、両部は同じフロアで席も隣同士。テレワークが進み、合同会議は思うようにできていないが、常に情報共有しながら二人三脚で歩を進め始めている。

 社内では、同社のDXを大きく左右する「デジタルコンストラクション」への改革が着実に進行している。それは創業以来、同社が常に追い続けていた「建築の工業化」の次世代の姿でもある。

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